第三部 ZODIAC CRUSADERS
CHAPTER#9
PHANTOM BLOOD NIGHTMARE
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【1】
ようやく、追いついた。
ようやく、辿り着けた。
怖いとか恥ずかしいとか、本当に全てがどうでもよくなり、
彼女は今腕の中にある、今胸の中にある温もりを力いっぱい抱き締めた。
本当に、頭の中が真っ白になるほど幸福で、
このまま死んでも良いとさえ想った。
それほどに空条 承太郎が 『してくれた事』 は、
吉田 一美にとって絶対的だった。
「おま……えは……?」
「――ッ! ――ッッ!!」
流石に動揺の色を隠しきれない承太郎の傍らで、
フレイムヘイズの少女がただならぬ気配を発している。
余りにも唐突過ぎて、理不尽で、
悔しさと狂おしさに涙まで滲んでくる。
きつく食いしばった口中がギリギリと軋り、
全身を駆け巡る血がマグマのような高熱を宿した。
シャナがここまで烈しい負の感情を抱いたのは、
アノ男 『DIO』 を除いてはコレが初めてだった。
(殺……す……!)
本当に誇張でも何でもなく、善悪の彼岸も飛び越えてシャナは純粋にそう想った。
その後、何がどうなろうが知った事ではない。
瞳に宿る漆黒の意志に促され、少女は変貌しようとした。
本来の使命を忘れ、ただ感情の灼かれるがままに。
ソレを制する、耳慣れた音。
「……」
空間の歪曲するような残響の元、
スタンド 『星 の 白 金』 が承太郎の背後で悠然と屹立していた。
海風と関係なく、長い黒髪を揺らし纏った腰布を靡かせて。
「あ……!」
星形の痣が刻まれた首筋に両腕を絡めながら、
吉田はその存在を注視した。
「 “視えるのか?” オレの、スター・プラチナが」
予定外の再会に応答するよりも、承太郎は冷静に本題のみを訊いた。
「はい……はっきりと視えます。
とても、強そうで、カッコよくて、キレイな幻 象ですね。
本当に、空条君の分身みたいです」
言いながら寄せられたスタンドの右手に、
少女は狼狽える事なく頬を寄せる。
「わっ」
いいからさっさと離れろ!
とシャナが撒き散らす闘気と殺気を覚ったのか、
スタンドは吉田を横抱きにしてそっと路面の上に降ろした。
“アノ時” から、長い長い距離を越えて、
再び真正面から見つめ合う二人。
絶対に在り得ない邂逅。
絶対に交わる事のない道程。
しかしソレが今、人智を超える 『運命の環』 の中で確かに結び直された。
「……なんか、大分雰囲気変わったな? まるで別人みてーだぜ」
「そんな事ないですよ。
相変わらずよく転びますし、うっかりして失敗する事も度々。
流石に、病気や貧血で倒れる事はなくなりましたけどね」
外見に格段の違いはないが、
瞳に宿る強い意志を承太郎は見逃さ
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