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先恋
先恋〜後悔〜

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「…好きって…」
沙奈はかたく目を閉じた。暫く沈黙が走る。
「もしかして…」
沙奈が来た…っと頭の中で叫んだ直後、陸太の口から、
「告白の練習ですか?」
陸太がニコニコ笑っていた。沙奈は酷く恥ずかしい気持ちだった。まさか、こんな…
「フフッ、本番も頑張って下さいね!」
陸太の笑顔が胸に刺さる。息が出来ない。声も出せない。ただ、陸太が好きだという気持ちを無理矢理抑えるように、一度だけ、頷いた。




陸太の背中を見つめていた、あの光景を思い出しながら、沙奈は一人、陰で涙を流していた。
「…も…言わなきゃ良かったのに…馬鹿だなぁ…当たり前だよ、教師に告白されるなんて、思うはず無いじゃんか…」
酷く悲しい、苦しい、辛い………そんな気持ちが押し寄せてくる。何故いきなりこんな事をしてしまったのだろう?そんな後悔は消えることなく、沙奈の胸を締め付けていた…。




「あ、先生!今良いですか?」
「…いや、ゴメン…」


「せっ、先生…」
「…また後でね」


「……先…」
「……ゴメン……」


どれだけ避けているだろうか、陸太も心配そうに此方を見ている。分かってる、こんな事、あってはいけないことだなんて、そんな事は分かっているのだ。それでも…

「…ごめん…ごめんね、ごめんね、春先君…ごめんね…ごめんなさい……」
沙奈はただ、謝っていた。ただただ、苦しみに押し潰されそうになりながら、謝り続けた。



〜翌日〜
沙奈は、ゆっくりと目を開け、カレンダーを見ると、ため息を漏らした。土曜日…二〜三時間の部活だ。そんな長時間、陸太の側にいるなんて…、沙奈は準備を終え、暗い気持ちのまま、学校へ向かった。

「おはようございます!」
生徒達が挨拶をしてくれる。沙奈もそれに笑顔で答えた。
「…おはようございます」
「おは……」
沙奈は思わず、顔を背けてしまった。
「おは…よ…」
「…先生…」
「…っ??…やっ??」
陸太が沙奈の手を軽く掴む。沙奈は驚きの余り、それを振り払ってしまった。
「…先っ…」
「ほ、ほら、部活!準備して??」
「先…」
「早く????」
陸太は哀しそうな顔をして、そのまま部室へと走って行ってしまった。
「…あ…」
沙奈はその背中へと伸ばした手を、ゆっくりと引き、胸に当て、俯いた。
「…ごめん…ね」
この言葉は本人に掛けるべき言葉だ。それを呟くことしかできない自分が沙奈は情けなく思い、そして、自分を酷く憎んだ。

「…ごめんね、ごめんね…」
陰で謝ることしかできない。

「…ごめん…ね……好き…だよ…」

もう、陸太には告げられないだろう想いは、溢れるほどに心の中に溜まっていったーー。
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