EPISODE03勇者U
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少女が――
「……ガイ?」左目の義眼の少年が――
三者三様が違う表現名で「彼」を呼んだ。
間一髪で彼女の危機?に間に合った事に、凱は胸をなでおろした。セシリーと行動を共にしていると、いつもこうなってしまう。
そんな様子を見ていた少年は、冷たい笑みを浮かべてくっくっく、と笑いをこぼしていた。
「大した騎士殿だな。ええ?」
「うるさい!黙れ!」
「笑っちゃだめですよ!ルーク!」
「知るか。リサ」
いつの間にか凱を除く三人は小嘲と反抗と否定のやり取りをエンドレスしていた。
取り残された凱は、浮浪者が振り回していた「鉄のオノ」を切り裂く閃光の正体を目撃した。
芸術の域に到達する刃の波。
崇高の精神を体現する刃の反り具合。
見間違えるはずのない柄と鍔。
(すごいな。まさか日本刀が見れるとは思わなかったな)
日本刀とは一言で言っても、刀師の技量によってその切れ味は激しく変化する。
繊細な切れ味を残す「業物」もあれば、もはや棍棒と大差ない「凡刀」にまで至る。
瞬間的に鉄を切り裂いたルークの刀は相当の業物なのだろう。
「セシリー、もう立てるか?」
「ああ、すまない……」
折れた剣をじっと見つめたまま、セシリーの瞳から光が失われた。力なく返事したセシリーの表情が、凱に一つの心配を抱かせる。
「そういえば、明日は騎士団の遠征があるんじゃないのか?」
そうだ。
代わりの剣をさがさないと、そう思った時、彼女の意識は別の世界へと飛んで行った。
――しかし、どうしたものだろう――
――まるで……心まで折れてしまったかのようだ――
「セシリー、君は自分の剣が折れてしまった時、強い敵を前にした時……『負ける』と思ったか?」
ドキっと、一瞬自分の心臓が跳ね上がった。
図星だった。
折れた心を読み上げられたような感覚に襲われた。
初めての実戦で、何もできないまま、確かに『負ける』と思った。
否定できない。
「これだけは伝えたい」
「ガイ?」
「一瞬でも『負ける』と思ったヤツは絶対に負ける」
真っ直ぐな凱の言葉は、セシリーの心に深くしみこんでいく。
ああ、だからなのか。
私を助けてくれた『剣』に対して、魂が震えたのは。
きっと、無意識で求めていたのかもしれない。
弱い自分を知った、思い知らされた、圧倒的に無力、だから欲しいと。
あの剣のような、『折れない勇気ココロ』を!
「あの剣ですか?」
どうやらセシリーは独り言を呟いていたらしい。それをリサが聞いていて、剣という単語に反応した。
「ナイショですけど……あれはルークが鍛錬した剣なんですよ」
「「何だって!?」」
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