364部分:第五十話 雪原の中でその一
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第五十話 雪原の中でその一
雪原の中で
カミュ達はそのまま雪原を進んでいた。犬橇は順調に北に進んでいる。
「やれやれ」
「変わらないな、おい」
こう言って愚痴を言い合うのだった。
「幾ら進んでもな」
「見渡す限り雪か」
「もうどれだけ民家見てない?」
「さあな」
こんな話をしている中でも犬橇は進んでいく。止まる気配は全くない。
それと共に場所も変わっている筈であった。だが幾ら進もうとも彼等が見るのは。見渡す限りの銀世界であり雪ばかりなのであった。
「雪以外見えるか?」
「いいや」
「何もな」
「だよな」
そうなのだった。彼等はもう何日も。雪ばかりを見ているのである。
食料はありテントもある。犬達も全て健在だ。しかしそれでも彼等はその果てしない銀世界にいい加減飽きというものを感じだしていたのである。
「雪以外のも見たいよな」
「見渡す限り白でな」
「他にないからな」
「わかってはいたけれどな」
それでもなのだった。いい加減何日もだと飽きるというのだ。
その中を進みながら彼等は。うんざりとした表情で言うのであった。
「風呂入りたいよな」
「ああ」
「そう言えば風呂もな」
「全然入ってないよな」
このことも言い合うのだった。
「何日入ってない?」
「さあ」
「もう忘れたぜ」
こんな有様だった。とかく何日も雪だけを見てその中を進んでいるだけなのだった。
それで愚痴も出る。しかしそれでも見られるのは相変わらず雪の世界ばかりだ。ぼやいてもどうしようもないものがそこにはあった。
「けれど汗もかかないからな」
「寒いからな、何せ」
何といってもこれであった。
「汗もかかないし」
「来る日も来る日も雪か」
「いい加減に嫌になってきたな」
そう言ってもやはり見えるのは雪だけである。他には何もなかった。
「なあ犬達何でこんなに元気なんだ?」
「そりゃあれだろ。犬は喜びってな」
「雪が好きか」
「そうなんだろ」
日本の童謡の話もするのだった。
「おまけにあれだろ?狼の血を引いていてロシア生まれの連中だからな」
「別に雪はどうってことないか」
「きっとそうなんだろ」
そしてこんな話をする。
「やれやれ。喜ぶのは犬だけか、全く」
「馬だと流石に無理だしな」
「雪の中はな」
馬は雪を進むのに向いてはいない。だからロシアのこの辺りでは馬を使う人間は非常に少ないのである。大抵がこうした犬やムースの橇なのだ。
「犬と俺達の楽しい旅」
「そういうことにしとくか」
「そうしとくか」
最後には開き直るのだった。そうしてそのまま進み続ける。ある程度行ったところで全員にカミュが告げてきた。
「よし、一時休憩だ」
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