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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百八十二話 戦う毎に必らず殆うし
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さすってくれる。
戦況は更にこちらが優位になっていた。スクリーンには一方的に撃ち沈めれていく敵が映っている。戦術コンピュータがモニターに映し出す擬似戦場モデルでも敵の戦力は確実に減りつつある。此処からの挽回などヤン・ウェンリーでも不可能だろう。
戦いながら反転など簡単に出来るものではない。反転のタイミングは各艦によって違うからまばらになる。要するに反転できても周囲との連携を取りつつ前進などと言う事は直ぐにはできない。
つまり艦隊としての行動は取れないのだ。だから前進して相手の後方に喰らい着くと言うラインハルトの選択のほうが正しいのだ。犠牲は有っても混乱は少ないし艦隊としての秩序も維持できる。
哀れなものだ、敵の艦隊はこちらの攻撃よりもシュターデンの命令のせいで被害が大きくなるだろう。ここまで来ると悲劇と言うよりは喜劇だな。さっきから余りの馬鹿馬鹿しさに笑う事しか出来ない。
「ワルトハイム参謀長、シュターデン大将に降伏を勧告してください」
「降伏勧告ですか、しかし受け入れるでしょうか」
ワルトハイムの顔には疑問がある。まあ無理も無い、俺とシュターデンは犬猿の仲だからな。簡単には受け入れないだろう。
「指揮官ならば、これ以上部下を無駄死にさせるなと伝えてください。死ぬのであれば自分一人で死ね、周囲を巻き込むなと」
「はっ」
帝国暦 487年 12月15日 帝国軍総旗艦ロキ ジークフリード・キルヒアイス
“自分一人で死ね、周囲を巻き込むな” 司令長官の言葉に艦橋は静まり返った。何処か怒りを押し殺したような口調だった。皆、司令長官の怒りを知ったのだろう、先程までの勝利の興奮は何処にも無い。互いに顔を見合わせている。
司令長官は戦況を見て笑っていた。だがあれは喜んでいたのではなかった。シュターデン大将の余りの拙さに呆れ、怒っていたのだ。そして悲しんでいた。
「閣下、シュターデン大将は降伏勧告を受け入れるそうです」
ワルトハイム参謀長の言葉に艦橋に歓声が沸き上がった。しかし参謀長は戸惑っている。躊躇いがちに司令長官に話しかけた。
「シュターデン大将が、司令長官と話をしたいと言っておりますが、如何なさいますか」
「……スクリーンに繋いでください」
スクリーンにシュターデン大将が映った。敗北のせいだろう、目が血走り顔面が蒼白になっている。
「小官の負けだ、それは認める。しかし卿のあの用兵は何だ。二倍の兵力を前にオーディンを守らず、出撃してくるとは。気でも狂ったか、卿は用兵の常道を知らぬ」
「……」
シュターデン大将の言葉に司令長官は何も言わなかった。ただ苦笑している。
「何とか言わぬか、ヴァレンシュタイン」
「無礼だろう、敗者の分際で。司令長官への礼儀をわきまえ
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