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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百八十二話 戦う毎に必らず殆うし
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「……」
こんな馬鹿と話しても無駄だ。今は先ずシェッツラー子爵と連絡を取り、同士討ちを止めさせなければ……。

「閣下! 帝国軍総旗艦ロキを確認! 後方の艦隊はヴァレンシュタイン司令長官の直率艦隊です。規模、約一万五千!」
「馬鹿な、貴様ふざけているのか!」

私の怒声にオペレータは生意気にも反論してきた。
「ふざけてなどいません! スクリーンに投影します」
「!」

スクリーンに漆黒の戦艦が映った。艦橋にどよめきが起きる。間違いない、あれは戦艦ロキ……。どういうことだ、何故そこに居る。シェッツラー子爵はどうした、……まさか、敗れたのか……。

「閣下、やはりあれは敵です」
「そんな事を言っている場合か!」
お前は副官失格だ。何の役にも立っておらん! 私を不愉快にさせているだけだ!

「馬鹿な、どうしてそこにいる……。有り得ない、貴様はオーディンに居るはずだ、魔法でも使ったと言うのか」
自分の声が震えを帯びているのが分かった。

「閣下、敵が接近してきます。このままでは敵が侵入してきます」
分かりきった事を言うな、ディートル大尉。後方からの奇襲、しかも敵のほうが戦力は多い、となれば味方は到底耐えられまい。このままでは艦隊は全滅しかねない。

「……全艦隊、反転せよ!」
「閣下! 反転させても混乱が生じるだけです。時計とは逆方向に……」
「黙れ大尉! 卿の意見など私は必要としておらん、反転攻撃だ!」

味方の方が少ないのだ、敵の後背に着く前に大半は撃破されてしまうだろう、ならばこの場で反転攻撃をかけるべきだ。早いほうがいい、その方が少しでも多くの艦で反撃できる。


帝国暦 487年 12月15日  帝国軍総旗艦ロキ   エーリッヒ・ヴァレンシュタイン


「敵、反転しています」
「馬鹿な、気でも狂ったか」
「好機だ、ワルキューレを出そう。今なら一方的に敵を攻撃できる」

ワルトハイム達が興奮気味に話しているのを聞きながら、俺は堪えきれずに思いっきり失笑していた。やるんじゃないかと思っていたら本当にやった。期待を裏切らない男だな、シュターデン。

何処かでラインハルトの声が聞こえる“俺に低能になれと言うのか、敵の第四艦隊司令官以上の?”。シュターデンに聞かせてやりたいものだ。おそらく顔を真っ赤にして怒るだろう。戦術理論を駆使して反論するかもしれない。

シュターデン、頼むから俺を笑わせないでくれ。胸が、脇腹が痛む、笑い死にしそうだ。それともこれがお前の新しい戦術か? ならば大したものだ、特許でも取るのだな。

「閣下、大丈夫ですか」
「ええ、大丈夫です。あまりに予想通りなので可笑しくて……」
その先は続けられなかった。笑いが止まらず、咳き込んでしまう。ヴァレリーが背中を
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