二十二話:ライフゲーム
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食事に手をつけずに切嗣を見つめ続ける。
それを意識することもなく、切嗣は食べていいようには見えない物体を口に運んでいく。
口内を形容しがたい味と、触感が蹂躙するが、おくびにも出さない。
「……うん。美味しいよ」
「よかったぁー。ちょっと失敗しちゃったからどうかなと思ったんだけど、お口にあったなら嬉しいわ」
どこがちょっとだと全員が、無言でツッコミを入れている間にも切嗣は食べ進めていく。
まるで、一度手を止めてしまえば、二度と進まないとでもいうように。
鬼気迫る気迫で、スプーンを動かし続ける。
「ふう……ご馳走様。アイリ、悪いけどお茶を持ってきてくれないかい?」
「はい、お茶ね。えーと、どこにあったかしら」
そして、あっという間に完食してしまう。
だが、体に残ったダメージは本物であった。
アイリの姿が見えなくなったところで力なく崩れ落ちる。
「おとーさん! しっかりして!!」
「そうよ、こんなところで倒れてどうするのよ!」
「ああ……イリヤ、クロ……僕は…正義の味方に…なれたかな…?」
駆け寄ってくる娘二人に、微笑みかけながら切嗣は小さく問いかける。
自分は子供の頃に憧れていた存在になれたのかと。
「うん…! うん…ッ! おとーさんは正義の味方になれたよ…ッ」
「そうよ…本物の…私たちの正義の味方よ…ッ!」
娘たちの言葉に満足げな表情を浮かべ、衛宮切嗣は声をはき出す。
「ああ―――安心した」
その言葉を最後に、衛宮切嗣は安らかに瞳を閉じるのだった。
娘たちからの心の籠った言葉と、小さな安らぎをしっかりと胸に抱きながら。
――ケリィはさ、どんな大人になったの?――
――僕はね、正義の味方になれたんだ――
「いや、これ食事よね? なんでこんなことになってんのよ? というか、最近こんなのばっか……まともに食事がしたいわ……」
事態に困惑したジャンヌ・オルタの心の叫びは、誰にも届くことなく消えていったのだった。
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