362部分:第四十九話 竪琴の力その六
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第四十九話 竪琴の力その六
「涼風の様なものだ」
「どうということはありません」
「その通りだ」
カミュも再び言う。
「この程度ならばだ。何にもならない」
「カミュ様の修行の場はシベリアでしたよね」
「ここよりずっと寒いんですよね」
「まだ。温かい位だ」
実際にこう青銅の者達にも答えるカミュだった。
「この程度ならばだ」
「温かいですか」
「これで」
「まだな」
カミュの表情は変わらなかった。
「温かいものだ」
「シベリアってのはつくづく凄いところなんですね」
「ここって北極圏なのに」
青銅の面々はそれぞれお茶やウォッカと一緒に黒パンや燻製を食べながらカミュの話を聞いている。カミュも彼等と同じものを食べながら話している。
「ここよりもですか」
「そりゃ相当なんですね」
「人もいない」
カミュはまた述べた。
「そうした場所だ」
「っていうとここよりもですか」
「本当に想像を絶するところなんですね」
「確か殆ど北極海だったんじゃ」
シベリアといってもかなり北の方なのだった。
「そんな場所で修行されていたんですか」
「アクエリアスの修行を」
「辛かったが懐かしくもある」
ふとカミュの目が懐かしいものを思い出すものになった。
「あの時のことはな」
「カミュ様の青春ってわけですね」
「昔懐かしい」
「そこまで歳は取ってはいないが」
ただこのことは注釈を入れるように言うカミュだった。
「私とてな」
「まあそうですけれどね」
「カミュ様にしろ」
青銅の者達は一応カミュをフォローはした。
「まだまだ若いですよ」
「そういえば黄金聖闘士の平均年齢って」
この話が出ようとした。しかしそれはすぐに引っ込められてしまった。
「いえ、それは」
「何でもありません」
「失礼しました」
こう言ってその話は引っ込めるのだった。すぐにであった。
「老師のことを考えたら」
「それはちょっと・・・・・・でしたね」
「すいません」
「あの老師はまた特別な方だ」
だがカミュはその彼等の言葉を遮らなかった。
「先の聖戦からの方だからな」
「そうですよね。長いですよね」
「先の聖戦って」
ハーデスとの戦いのことである。あの戦いから相当な歳月が流れている。聖域はその間復興に務めていたのだ。それだけの期間がかかったのである。
「生き残られたたった二人の方ですからね」
「教皇と合わせて」
「教皇も老師も偉大な方々だ」
カミュはその二人については素直に賞賛した。
「あそこまでの方々がおられればこそだ」
「聖域は安泰だと」
「そう仰るのですか」
「老師はあの場所から動かれることはないがだ」
彼いるのは中国の五老峰である。そこに留まり続けているのだ。
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