行こうよ まぶしいオタクの世界
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バックステップで距離をとる。
くるみ「なんで逃げるんですか」
明「俺の……ATフィールド(心の距離)に近づくんじゃない」
くるみ「彼女でもいるんですか?」
本郷は少し逡巡する。
明「彼女どころか親しき連中は遠いところだ」
生きているかどうかも分からない。
くるみ「それじゃあ、本郷さん」
本郷の手を握り、和泉はひっぱっていく。
明「なにをする! 離せ!」
くるみ「離しません。あなたの居たアキバとここは全然違いますから」
女子高生に連れられるまさにデートといったところか。
本郷は隣に立ちながら彼女に付き従う(掴まれてるか、脅されている)
くるみ「ゲバブ〜! おいしい」
明「ああ、うまいな」
くるみ「かれーらいす〜美味ぃー」
明「ああ、うまいな」
くるみ「ラーメンっ! 博多の味だよ!」
明「ああ、うまいな」
くるみ「カンダ食堂! 作りおきなのにおいしい!」
明「ああ、ってなお前! どんだけ食うんだよ!」
本郷も満腹はすでに通り越していた。
くるみ「ごめんなさい。秋葉原はおいしい店がいっぱいあるから」
明「アキバはオタクの街なんだがな……」
くるみ「それはもう古いんじゃないかな」
明「それはなぜだ?」
くるみ「オタクって変わっていきましたから、秋葉原の今は進んでいます」
彼女の言葉に本郷は足を止める。
中央通りドンキの前。
往来の真ん中で止まると多くの人が苛立ちつつも避けていく。
明「オタクはオタクだろう」
くるみ「すでにそれは過去のもの。もうみんなタダの趣味になってるんです」
明「ライトオタクより性質がわるいな」
くるみ「とはいえ今では二次元を嗜まない人を探すほうが難しい時代になりました」
明「オタクが普遍化したということだろう? 喜ばしいことだ」
くるみ「それは非現実をなくすにはもっとも効果的なこと。オタクやクリエイターたちから想像の力を奪うことになりました」
明「どういうことだ。オタクは妄想あってのものだろう?」
くるみ「もう古いんです。そしてもう遅いんです」
明「遅い……」
彼女は本郷に近づく。
くるみ「名残惜しいですが、わたしもそろそろ帰らないと」
明「待て! 肝心なことが」
くるみ「なんなら身体でお相手しましょうか?」
和泉は制服の首元から胸元を露出させる。
明「卑怯な……」
くるみ「またデートしましょう! じゃあね、本郷さん」
駆け出していく彼女はまたたくまに雑踏にまぎれていった。
明「オタクが……オタクじゃなくなる」
この言葉は本郷の中にしこりとなって残り続けた。
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