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魔弾の王と戦姫〜獅子と黒竜の輪廻曲〜
第10話『民を護る為に〜ティグルの新たなる出発』
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けるなと言いたかったのだと思います」

「ガイさんの言いたいことは俺も分かっている。でも、俺には領主としての義務が……」

「それだけ彼女が抱くあなたへの想いが強いのでしょう。彼女の主であるあなたの務めは重大なものなのです」

「……分かっている」

先ほどと同じ言葉を告げるティグル。でも、凱のおかげで気合と勇気が入った。
ティグルとティッタは領主と侍女の関係だ。戦争が起きる前まで、凱に言われる前までは考える必要のなかった事。当たり前のことの重要性を再認識させられるティグルであった。
日が南中高度を示している。今からヴォージュ山脈を越えようとすれば、途中経路で日が沈みきってしまう。夜道を歩いていく危険性を少しでも落とす為に、多少の時間損失をしても、太陽の動きに沿って行動したほうが確実だ。
特に夜は暗殺者や野盗の独壇場といっていい。夜目の効く連中が相手では分が悪い。今ではティグルも立派な標的なのだから――
出立の準備を再開した二人は、翌朝の夜明け前を待ってキキーモラの館へ向かう事を決めた―





『夜刻・セレスタの町・中央広場・キキーモラの館へ向かう前日。』





内乱勢力に対する牽制力として、エレンの指示でアルサスに滞在することとなったライトメリッツ兵。その指揮官のルーリックと共に、凱は酒場へ誘われた。

「みんな楽しそうだな。顔を赤くして、火照らせて、笑っている」

「酒場ですし、どこの町もそんなもんですよ。ガイ殿」

「なんだかすごいな。ついこの間までのアルサスとは思えないくらいにぎやかだ。俺も胸の内側から暖かい想いで溢れそうな気分だよ」

「民の力を侮ってはなりませんな。彼らのたくましさはどんな苦しい境遇でも立ち直る強さを持っています」

「全くだ」

凱を軸にはじまったアルサスとライトメリッツ兵の交流は、意外な形で成り立っていった。
数刻前、ぞろぞろと集まってきたライトメリッツ兵にも、結局凱は読み書きを教える事となった。どうやら興味を持ち始めたらしい。牽制するためとはいえ、次の命令があるまで、若しくは、エレン帰還まで、それとも、外敵の侵略があるまでは暇を持て余している。
ちょうどいいから、凱の講義を暇つぶし程度に考えていたのだろう。
暇を転がす人間、退屈は身からくる敵ともいえるわけで、ルーリックも凱に見物していいかと頼んだのだ。もちろん、凱は快く承諾した。兵がおとなしくしれくれるなら、凱にとっても願ったりかなったりだ。
どうやら、警戒していたのは杞憂だったらしい。ライトメリッツの気さくな心に触れたセレスタの住民たちは、次第に距離を縮めていった。
凱とルーリックは適当なところで腰を下ろす。二人がそんな話をしていると、注文していた料理がぞろぞろと入場してきた。感謝を
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