第9話『戦姫の所作〜竜具を介して心に問う』
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を眠らせたままにすべきだったと後悔せし。この結果は『獅子の尾を踏んだ故に〜』として後生に語り継がれたという。もう、カディス王国は地図に記載されていない。
もしかして、獅子王凱もまた、ゼフィーリア女王と同じ軌跡をたどるのではないか?ブリューヌの内乱に合わせて一斉蜂起するのか?
ヴァレンティナの事を重ねるわけではないが、それだけにエレンが警戒するのもどことなく分かる気がする。
そんな思考を遮るかのように、穏やかな声がソフィーの耳元をくすぐった。
「ソフィーヤ=オベルタスではありませんか?」
「ヴァレンティナ……」
一瞬ソフィーの声がうわずった。脳裏にヴァレンティナの姿が浮かんだ時に本人が現れたからだ。
あの時の謁見と同じように、再びソフィーの表情には驚きの色が浮かんだ。
普段のヴァレンティナは健康に優れないという理由であまり王宮から出ないことで知られる。その為に今回の出廷は辞退するかと思われた。いや、ソフィーが一方的に思っていただけかもしれない。
「珍しいわね。公判には出廷しないと思っていたから……身体のほうは大丈夫なの?」
「あまりいいとは言えませんが……今後のジスタートと隣人のブリューヌの為ですもの。多少は無理をしないと」
口元で手を抑えながら、どことなく咳を払う。その表情にはどこか疲労感が滲んでいた。
「ジスタート中はどこも賑やかすぎて、それだけで疲れてしまいますから」
表にこそ出さないものの、ソフィーはこういったヴァレンティナの病弱体質を欺瞞情報だと思っている。
大鎌を飾るように担いでいる彼女を疑っているわけではないが、とりわけ信じているわけでもない。
当然かというように、ヴァレンティナもソフィーの出方を伺っている。非合法な方法で自分の情報を得ようとさせれば、必然的にソフィーには虚偽の情報しかいきわたらない。他国の人物の情報を得るには、どうしても人を介さなければならないからだ。
このような情報漏洩の仕組みを知るあたり、やはりヴァレンティナは尻尾を掴ませない女狐と評価するソフィーの弁。
「ではソフィーヤ。一つだけご忠告を」
「何かしら?」
「エレオノーラ姫のおっしゃる通り、眠れる獅子が動けば時代も動きますわ」
「……!!」
かすかな動揺が、ソフィーの瞳に色濃く映る。
ソフィーは気づけなかった。エレンのように尾行集団には気づいていたが、彼女の気配は全く感じられなかった。
(どこから聞かれていたのかしら?)
言われっぱなしも癪なので、ソフィーヤも嫌味を込めて彼女の耳元で唾を吐く。
「そういう獅子身中の貴女《ヴァレンティナ》は、ブリューヌの内乱に対してどう動くのかしらね」
「まぁ……」
思わぬソフィーの反撃に、ヴァ
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