第9話『戦姫の所作〜竜具を介して心に問う』
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技について私はサーシャに反論したことがある。『兵の一人でも死なせずにすめば、別に竜技を使ってもいいではないのか?』……と」
「なんて言われたの?」
「兵は君ではなく、竜具しか見ないようになるよ……と」
心の成長しきっていなかった当時のエレンは、竜技という超常の力を受け入れるのに戸惑いを覚えていた。それ故に、竜技という強大な力の使い方を具体的に思い描くことができなかった。
だが、今となっては素直にサーシャの言葉も理解できる。『兵の一人でも死なせない為に、たやすく竜技を振るい続ける』ことが、自分の望もうとしている未来をもたらすとは思えないから。
竜技という爪を振るい続けた結果がもたらす場所――同じ人間が死に絶えて――未来永劫禍根の残る世界に辿り着きたいとは思わない。
自分は『戦姫』ではなく、ただの『エレオノーラ』として、間違っている事は反論し、正しいと信じるものは守りたい。
今はぼんやりとしか道が見えなくても、悩みと失敗を繰り返しながら手探りで道を進むしかない。今日や明日に答えが分からなくても、いつかは分かるかもしれないと信じて。
それから黙り込んだエレンに、ソフィーは優しく微笑んだ。
「わたくしも、多分サーシャも、――竜具を介して心に問う――ことに対して、誰もが明確な答えを持ち合わせていないと思うわ」
「……サーシャの言葉は、リュドミラにも伝えるのか?」
「ええ。それこそ、サーシャがわたくしにお願いした事だから」
再び、2年前の懐かしい思い出がよみがえる。
喧嘩だ。それも、常用化とも言っていいほどの――
何が面白くなかったのか、今となっては原因ですら思いだせない程の些細なものなのだろう。
だが、今は幼稚な振る舞いをしてきた頃とは違う。だからこそ、サーシャはこのような賢人じみた助言をしたのだろうか。エレンにはそう思わずにはいられない。
エレンは謁見の時のリュドミラを脳裏に描いた。
リュドミラ本人はブリューヌ介入に反対の意志を示した。だが、テナルディエ公爵には協力しないとは言っていない。
もし、テナルディエ公爵が何かしらの支援を要請して、オルミュッツ公国公主として、ルリエ家としてのあいつなら、案外やる気かもしれない。話し合いで済むことならば、謁見が終わりリュドミラと顔を合わせた時、既に決着を終えていたはずだ。
いずれにせよ、竜具を介して爪を咬み合ってみなければ、凍漣の雪姫と銀閃の風姫は先に進めない。
――サーシャ。もし、リュドミラと戦いを避けられなくなった時、私は、あいつの心に触れる事が出来るだろうか?――
そうエレンは自問して、ソフィーとの対談は終わった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
着なれた軍服に身を包み、エレ
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