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俺達は何を求めて迷宮へ赴くのか
57.第七地獄・四聖諦界
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かのようにオーネストの体がゆらぎ、顔から生気が失せていく。
 それでも、アズは貫くように揺るぎない瞳で俺を射抜き続けた。

「なぁ、オーネスト。俺は正直黒竜に勝つ方法が見当たらねぇよ。見当たらねえけど、それでもお前と俺なら勝てると思って、お前も負けてやる気はないと言ったからいけると思ったんだ。それがお前、途中から俺の事は眼中にないみたいに神風よろしく突撃と攻撃を連打しやがってよぉ……そいつはな、もう俺の信じるオーネストじゃねえんだよ」
「………だが、あれが俺の本心だ。なんとなく知ってんだろう、お前も?」

 消えてなくなりたい――。
 すべてを忘れたい――。
 受け入れて受け入れて、受け入れ続けた末に望むに至った矛盾の向死欲動。

「甘えんなボケ」

 俺の友達は、それを分かったうえで踏みにじった。
 まさに、俺が今までやってきたように。
 アズの背後の『死望忌願』に黒竜の攻撃の一部が命中し、アズの脚が大きく抉れた。よろけた足を無理やり鎖で外骨格のように固定したアズが、今にも消え入りそうな腕に極限まで力を籠める。存在と消滅の狭間で生命の炎を燃やし尽くすように、込められた言葉は(こわ)い。

「てめぇなぁ、何でもかんでも過去の思い出と重さ比べて勝手に俺達を軽く見積もってんじゃねえよ。俺や『ゴースト・ファミリア』の連中にとっては今のお前が『重い』んだ。過去など知ったことか、くそくらえとほざいている今のお前に惹かれてんだ」
「だから来てほしくないんだよ。お前らは――お前らなんぞ、嫌いだ。どいつもこいつも好き勝手に俺の近くに寄ってきやがって」
「気に入らないんなら全員皆殺しにしてみろ。さあ、聞くぞ。お前にそれが出来るか?」

 出来るか、だと。
 簡単なことだ。
 俺はいつだって俺だけの意識に従って、俺だけの判断で決断できる。
 望めばやり、望まなければやらないだけ。自分に感情に従えば、待っているのは――。

「俺は――俺は、結局それは選ばないだろう。殺さない、だろうな」

 喉から漏れたのは、自信が欠如し、曖昧で、情けない声だった。
 心底考えて出した、抗いようのない結論だった。
 俺は、あいつらを――アズを、メリージアを、リージュを、ヘスティアを、ヘファイストスを、ココをヴェルトールをガウルを浄蓮をティオナをベートをリューをラッターをペイシェをキャロラインを――俺の周囲をうろつくとことん馬鹿で救いようのないお人よしどもを前に、躊躇うだろう。
 フレイヤは断じて殺すが、他は躊躇うだろう。今、俺が躊躇ったのだから。

 本当(オーネスト)が、(ライアー)を黙らせた。

「――だと思ったぜ」

 そこまで聞き届けて、やっとアズがにへら、と笑った。
 どこまでも――きっと死ぬ直前か、死んだ後で
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