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俺達は何を求めて迷宮へ赴くのか
57.第七地獄・四聖諦界
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 限界が近づいている。どちらの、何の限界かはわからない。ただ、近づいてくる。

 ―――。

 ―――。

 何か、異物が入り込むような感覚。超音速で弾けた鼓膜が再生され、その濁った音が脳に伝わる。

 これは、小さな無数の金属が擦れ合う、聞き慣れた音。鎖――あいつの気配。

 しかし、もう関係のないことだ。

 何もかも、何もかも、関係のない――。


「――黒竜より先に先ずお前を叩き落したろかぁぁッ!?」
「ガボュッッッ!?!?」

 人間の喉から鳴ってはいけない奇妙な音と共に、体が殴られたように横っ飛びに吹き飛んだ。考える間もなく音速の慣性が強制的に捻じ曲げられ、胃や腸、腹筋背筋大腰筋などを含む胴体の筋肉と背骨を含む数本の骨がグジャリ、ブヂブヂと異様な音を立てて引き裂かれ、これまでで一番の量の血を吐き出した。
 少し遅れて、アズに無理やり押し付けられた鎖が自分の胴体を縛っていることに気付かされる。
 こんな鎖を展開出来て、俺の体を加速の反動で体が両断されないように引き戻せる人間など、俺には一人しか心当たりがない。下手をすれば黒竜の攻撃より甚大な傷を負った俺は、目で相手を殺す力を込めてほぼ下手人の男を睨み付けた。

「ぐ、ぶ、あ……て、てめ……!!」
「黙れクズ・オブ・クズ。お前に文句を言われる筋合いなんぞ砂粒一つ分もねぇ。俺の話を聞かずに暴れ続けてたのが全面的に悪いのは確定的に明らかなので。しかし俺は曲がりなりにも天使なので鎖で負った傷はこの手持ち最後のポーションで治してやろう。ほれ、感謝の言葉は?」
「……耳が、おかしくなったかな。大親友に殺してほしいと懇願された気がする。殺してやるのが人情だし、一度確認してその通りだったら慈悲深く殺してやろうか」
「オーケー、きっと空耳だから気にする必要ないと思うよー」

 頭に少量の液体が降り注ぎ、細網一つ一つの隙間を縫うように体内に吸収される。この体を縛る呪いとは別に、それは俺のズタズタにさ入れた内臓器官と筋肉を再生させていった。

「内臓破裂させないと止まらないとかお前何なの?いかれてんの?」
「俺の日常のどこをどう見てまともな人間だと思った。この変質黒コートが――本当に、何のつもりだ?」

 これまで、アズライールという男にこれほど苛立ったことはない。自分の握力で自分の拳を潰してしまいそうなほど握りしめた俺の質問に、今度はアズがこれまで見たことがないほど怒りを露にした表情で胸倉を掴んでくる。

 アズの背後からは『死望忌願』が源氷憑依(ポゼッシオ)の加護を得た夥しい量の鎖で結界を張っていた。その結界も、黒竜からの外の攻撃で抉れては継接ぎのようにその場しのぎの再生を繰り返す程度の代物だ。

 アズは、敵を背後に欠片も背後を
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