第三十六話 お墓地その四
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「あと全部負けてるわよ」
「全部ですか」
「そう、全部よ」
特に酷かったのは二〇〇五年でした。
「全部負けてるのよ」
「それ言ったらホークスもですよ」
「そうなの?」
「巨人に勝ったの一回だけですから」
何かそうみたいです。
「杉浦忠さんがおられた時に」
「それかなり昔ね」
「南海時代です」
ホークスが大阪にあった頃です、親会社がダイエーに変わった時に本拠地が福岡に移ったとのことです。
「その時に」
「私達生まれてないわよ」
「あぶさんでも最初の十数年ですね」
「長いわね」
「それはそうですけれどね」
それでもです、十数年はかなり長いです。
「その間弱かった時期もあったりしました」
「今は物凄く強いけれどね」
「それで昭和三十四年にです」
「巨人に勝ったのね」
「巨人にシリーズで勝ったのその時だけなんですよ」
「他のチームには勝つのにね」
阪神や中日、それにヤクルトにはです。
「巨人にだけは勝ってないのね」
「不思議なことに」
「確かに不思議ね」
「その頃が巨人の黄金時代だったりしまして」
物凄く嫌な言葉です、巨人の黄金時代なんて。それだけで暗黒時代と言っていいかも知れないです。本当に真っ暗な。
「川上とか千葉とか別所とかいて」
「それで後は王さんや長嶋さん?」
「そんな時でした」
そうした巨人に選手が揃っていた時にというのです。
「ぶつかって負けてます」
「難儀な話ね」
「はい、嫌な話です」
ホークスファンとしてはというのです。
「巨人が勝つだけで嫌なのに」
「私もだけれどね、そもそもね」
ここで私は阿波野君に私達のいる大教会のお話をしました。
「奥華って大阪と広島に教会が多いから」
「ああ、阪神と広島ですね」
「巨人ファン少ないわよ」
「どっちかですか」
「かなり阪神ファンが多いわね」
「じゃあ僕は少数派ですね」
「そうね」
正直奥華の人でホークスファンの人ははじめて見ました。
「結構ね」
「やっぱりそうですか」
「ええ、ただね」
「ただ?」
「阿波野君巨人大嫌いでしょ」
「この世で一番嫌いです」
実にはっきりとした返事でした。
「嫌いな国とかはないですけれど」
「巨人は嫌いなのね」
「そうなんです」
何の淀みもない返事でした。
「もうとにかく」
「そういう人多いわね」
奥華にも天理高校にもです。
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