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おぢばにおかえり
第三十六話 お墓地その三
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「本当にね」
「そうでしたよね」
「全く、そのシリーズも」
 よかったのは第一戦まででした。
「四連敗で」
「一戦目勝ったじゃないですか」
「だからその一戦目だけじゃない」
 本当によかったのはその時だけでした。
「クライマックスはよかったのに」
「あの時一気に勝ちましたね」
「それもここぞという時にね」
 阪神にしては珍しくです。
「それでいけたと思ったら」
「いやあ、最初はしてやられたと思いましたよ」
「何で阪神ってここぞって時に勝てないのかしら」
 前を見て溜息です、ついでに横にいる子のいい加減さにもです。
「毎年毎年」
「因縁ですか」
「野球チームに因縁ね」
「あります?」
「どうかしら。人それぞれにはあるけれど」
 いい因縁は白因縁、悪い因縁は悪因縁といいます。この場合は悪因縁になるでしょうか。負けているので。
「野球チームにはどうかしら」
「やっぱりあるんじゃないですか?」
「どうかしらね」
 その辺りは私もわかりません。
「阪神いつもここぞって時に負けるけれど」
「勝負弱いのは確かですよね」
「黄金時代の西武はそうした時に強かったって聞いたわ」
 ここぞという時には普段よりさらに憎たらしいまでに強かったとのことです。
「もう何があっても負けないクラスの」
「らしいですね、だからもう西武の優勝見たくないっていうおじさん知ってます」
「そこまで優勝出来たら」
 それこそと思いました、もうよろづ病院は越えてお墓地にさらに近付いています、天理高校の男子寮である北寮も見えてきました。
「いいわね」
「羨ましいですか」
「心から思うわ、けれど」
 阿波野君に顔を向けて言いました。
「ソフトバンクも強いじゃない」
「それはどうも、ただまだですよ」
「あの時の西武よりはっていうのね」
「十年以上黄金時代でしたから」
 その間阪急と近鉄がそれぞれ一回ずつ優勝しただけだったらしいです。
「広岡さんから森さんまで」
「その間どれだけ優勝したの?」
「リーグ優勝十一回、日本一八回です」
「凄いわね」
 聞いていて溜息が出ました。
「十年以上黄金時代だったのね」
「その間もう無敵で」
「ここぞって時は勝ってたのね」
「それで他の球団は西武の引き立て役って言った婆さんいましたけれど」
「嫌われたでしょ」
「蛇蝎みたいに」
「そんなことは言ったら駄目よ」 
 他のチームのファンの人のことも考えないといけないです。
「間違ってもね」
「そうですよね」
「阪神ファンでもね」
「阪神はまた黄金時代は」
「ないんじゃないかしら」
 少なくとも私は知らないです。
「それは」
「あっ、そうですか」
「ええ、二リーグになってからはね」
 昭和二十五年、一九五〇
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