第十七話 姉妹の薔薇その十三
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「ですから」
「私は女王になれますか」
「必ず」
このことを約束するのだった。
「ですからご安心下さい」
「では」
「はい、そして女王になられた時には」
「司教が今言われたことを常に心に留め」
「そうして政を行って下さい」
司教はマイラにあらたまって述べた。
「この国の為に」
「国の第一の僕、それがでしたね」
「王、女王なのですから」
「そうですね、女王とは」
「国の僕なのです」
まさに第一のというのだ。
「ですから」
「国の為に全てを捧げ」
「全てを守らなくてはなりません」
それ故にというのだ。
「ですから」
「異端審問、法皇庁のことも知り」
「政を行って下さい」
「そしてマリーとも」
「仲良くされて下さい」
彼女とのことも言うのだった。
「くれぐれも」
「ではそうします」
「お願いします」
「マリーは私を愛していると言いましたが」
「真実のお言葉と思います」
「私が愛されるなぞ」
到底と言うマリーだった。
「しかも玉座には私よりも」
「いえ、マイラ様は愛されていてそして」
司教はマイラの心の乱れをすぐに打ち消した、それが危ういものになろうとしていることを察したからそうしたのだ。
「玉座に最もです」
「相応しいですか」
「そのことをご理解下さい、お人柄もご資質も信仰も」
「生まれは」
「王家の方です」
司教の返事は一言だった。
「それ故に」
「そうですか」
「自信を、確固たるそれをお持ちになって下さい」
自分を劣っていると思わずにというのだ、その生まれが。
「どうか」
「では」
マイラは司教の言葉に頷いた、だが。
その表情は変わらず沈痛なままだった、その顔で頷いてそしてだった。
司教の言葉を受けることにした、しかしその血への思いは変わることがなかった。彼女にとってそれはどうしても否定出来ないものであったが故に。
それでだ、マリーとこれからも会うと彼女に約束し自身もそうすると決めてもだった。一人になった時に遠くを見て言うのだった。
「私を愛するなぞ、側室の子である私を」
あくまで信じられなかった、それはマリーだけでなく他のあらゆるもの自分自身も含めてだった。どうしても信じられないまま時を過ごしていくのだった。孤独の中で学び祈りつつ。
第十七話 完
2016・7・17
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