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Three Roses
第十七話 姉妹の薔薇その九

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「ですが」
「今は、ですか」
「はい、それよりもです」
「今は、ですか」
「状況が変わりました」 
 それ故にというのだ。
「我が国、そしてです」
「他国もですか」
「新教徒が増え力も大きくなりました」
 国内外でというのだ。
「彼等を完全に排除すればです」
「国がもたない」
「そうした状況になりましたので」
 それ故にというのだ。
「私もです」
「そうしたことはですか」
「考えを変えました」
 新教徒達の完全な排除、この考えをというのだ。
「融和に、信仰もやはり」
「国を保つ限りですか」
「神もそうお考えです、この国にも守護天使と守護聖人がおられるのですから」
「守護天使と守護聖人に従い」
「彼等とはある程度でもです」
「融和すべきですか」
「我々は常に王国と対しています」
 司教もまたこの国のことを念頭に置いていて言うのだった、この国にいてエヴァンズ家に仕えているだけあってこのことを忘れてはいなかった。
「若し新旧の教徒達が殺し合い」
「国を弱めれば」
「喜ぶのは誰でしょうか」
「王国です」
 マイラはすぐに答えた。
「それは」
「そうですね、ですから」
「新教徒達ともですか」
「融和に務めるべきです、ただ」
「その力はですね」
「旧教に優位にならない様にです」
 例え融和に努めてもというのだ。
「ですから異端審問の者達も呼びましたが」
「それでもですね」
「彼等はあくまで猟犬であり」
「猟犬達は自由にさせない」
「捕まえさせません」
 その猟犬達にというのだ。
「見せてです」
「そして、ですか」
「はい、吠えさせるだけで」
「それ以上はですか」
「私はさせません」
 威嚇と恫喝だけの役目だというのだ。
「彼等には給与を与えますし」
「それは即ち」
「餌です」
 猟犬のそれだというのだ。
「それは常に与えます」
「そしてですか」
「はい、彼等は好きにはさせません」 
 決して、というのだ。
「それは」
「そうですか」
「彼等は猟犬ですが猟犬も色々です」
「その猟犬によって気質が違いますか」
「主に忠実な猟犬もいれば荒々しい猟犬もいて」
 司教はさらに言った。
「血に餓えた猟犬もいて」
「血に餓えた猟犬ですか」
「彼等はそれです」
「異端、新教徒の血を常に求める」
「そうした猟犬です」
 それが異端審問の者達だというのだ。
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