第十七話 姉妹の薔薇その八
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「それでどうして」
「愛情故です」
「それはマリーも言っていましたが」
「マリー様はマイラ様を愛しておられるのです」
「姉妹故にですね」
「左様です」
まさにとだ、司教は答えた。
「それ故に」
「ですがそれは」
「信じられませんか」
「私の様な者を愛するなぞ、ましてやです」
「王家の中で、ですね」
「私は常に一人なのです」
過去も現在もというのだ、もっと言えば未来もと考えている。そうして自分を徹底的に否定的に見て考えているのだ。
「王室の中では」
「いえ、それはです」
「違うというのですか」
「マリー様がおられます」
「それがどうしてもです」
「信じられないですか」
「あの娘が私を愛するなぞ」
到底とだ、マイラは言うのだった。
「有り得ないです」
「ですが」
「私がそう思っていてもですか」
「マリー様はマイラ様を愛しておられるのです」
「姉妹として」
「そうなのです」
「何もない、側室の子の私を」
またこう言うのだった、自分を卑下して。
「有り得ないことです」
「ですがマリー様をです。マイラ様も」
「愛せよというのですか」
「はい、有り得ないことではないですから」
マリーが思っていることと違い、というのだ。
「ですから」
「愛する、人を」
「そうです、そして共にこの国を導かれるのです」
「旧教の者としてですか」
「確かに旧教は優位であるべきです」
新教に比してだ、旧教の司教としてこれは譲れないことだった。この立場からもマイラに仕えているからこそだ。
「ですが国内に新教徒達も多くなっていて」
「彼等を完全に排除することは」
「不可能かつです」
司教はさらに言った。
「それは国の力を大きく削いでしまいます」
「新教徒を滅ぼせば」
「小さな力ではなくなっています」
新教徒、彼等は既にというのだ。
「何しろ王室自体が新教になっていますから」
「だからこそですか」
「そこまでは出来ません、ただ優位はです」
「保てるのですね」
「ですから」
「新教徒ともですか」
「融和に務めるべきです」
司教は彼の今の考えを述べた。
「出来る限り」
「優位を保ちつつ」
「左様です」
まさにというのだ。
「あくまで旧教の力を取り戻し」
「優勢に戻し」
「そのうえで、ですが」
「そうですか、ですが」
それでもとだ、ここでマイラは司教に言った。
「司教様は前は」
「旧教が、ですか」
「完全にと言われていましたが」
「はい、確かにです」
「以前はですね」
「そう考えてマイラ様にもお話していましたが」
司教は正直に述べた。
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