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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百八十一話 ファーストストライク
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「キルヒアイス准将」
「はっ」
「如何ですか、作戦参謀として戦闘に参加するのは。副官とは大分違うと思いますが」
司令長官の言葉にジークは微かに緊張を浮かべた。
「大変勉強になります。閣下の御配慮に心から感謝します」
「そうですか、期待していますよ、これからも」
司令長官は微かに笑みを浮かべると毛布を少し掛け直そうとしたが、傷が痛むのだろう、顔を顰めて手を止めた。フィッツシモンズ中佐が傍により毛布を掛け直す。司令長官は安心した表情で中佐にされるままになっていた。まるで母親と子供のようだ。
私が毛布を掛け直そうとしたら司令長官はどうしただろう? 恥ずかしさから嫌がっただろうか?
帝国暦 487年 12月15日 帝国軍総旗艦ロキ エーリッヒ・ヴァレンシュタイン
そろそろ戦闘は終わるだろう。思ったより早く片付いた。指揮官がシェッツラー子爵ということで効果的な反撃が出来なかった事もあるが、兵の錬度もあまり高くないようだ。
ワルトハイムを始めとして参謀達が指示を出している。特に問題は無い、十分に彼らは有能だ。だが男爵夫人に言ったシュターデンの欠点はワルトハイムにも当てはまる事だ。シュターデン程では無いにしろワルトハイムにも考えすぎてしまうところが有る。
今回の戦いも彼が最初から指揮を取っていたらどうなったか、オーディンの防衛を考えすぎる余りシュターデンの作戦に嵌ってしまい、包囲殲滅という事になっていたかもしれない。今回の戦いでその辺りが修正されれば良いのだが……。
キルヒアイスが分艦隊司令官達に指示を出している。良くやっているようだ、確かに能力は有る。本人も楽しそうに仕事をしている……。残念だよ、キルヒアイス、お前に残された時間はそれほど多くない。
悔いの無い様に生きるのだな。そのためのチャンスは何度か作ってやる。お前がラインハルトの腰巾着ではなかった事を周囲に証明するといい。そして死んでいけ、反逆者として……。俺がお前にしてやれる事はそれだけだ。
敵が降伏した。シェッツラー子爵は捕虜になった。とりあえずファーストストライクは取ったわけだ。セカンドストライクはシュターデンだ。士官学校以来の因縁だな、そろそろ決着を付けようか、シュターデン教官……。
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