第7話『闇の暗殺集団〜七鎖走る!』
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した。ディナントの戦いの前、ザイアンにも笑われました。『弓しか使えない分際で……弓は白人の前に出れない、臆病者の武器だ』って、だって、実際そうじゃないですか。これからテナルディエ公爵と戦うって時に……こんなに震えてる」
見れば、ティグルの腕が小刻みに震えていた。
情けないくらいに、ティグルは悔し涙を流していた。多分、ティグルは本心をさらけ出している。
朝からどこか、ティグルは浮かない顔をしていた。ティッタにはそう見えていた。
少し、凱は混乱した。ティッタもだ。
ウソから始まった彼らの会話は、いつしか軌条変更していたのではないか?そう思わずにはいられない。
それでも……
一つ一つ込められたティグルの想い。そして、それを包み隠さずに本気で話してくれる気持ち。ティグルには申し訳ないが、凱はなんだか嬉しかった。
「話は戻るけど、俺は、嘘をたくさんついてるさ。みんなが俺を勇者にしてくれたから、俺を信じてくれてる人たちを……誰も不安にさせたくないんだ。みんなの前で、俺は俺でなくちゃならない……みんなが俺を勇者と信じてくれていることを……人を超える力を持つものとして」
少し、ティグルは混乱した。聞けばどこか矛盾が生じているようにも聞こえる気がしたのだ。ただ、それを理解できる明晰な思考を持ち合わせているほど、ティグルはまだ大人ではない。
それでも、凱の込めた勇気という言葉に込めた想い。そして、包み隠さず話してくれる凱の気持ちには、ティグルとしても、ティッタとしても嬉しかった。
(ティグル様……ずっと気を張り詰めていたから……お屋敷でも一度2期に上がって降りてきた時には、ひどくさえなっているように見えた……)
ティグルも、知らず知らずのうちにウソをついていた。本当は弱音を吐きたかったはずだ。
貴族としての責務がティグルを支えるものであり、そして、縛り付けるものであったからだ。
領民を、ティッタを、不安にさせたくないから、その人たちの前でずっと、笑顔を振りまいていて――
「ティグル。勇者は何を対価に動くと思う?」
「それは……」
ティグルは、自分の領地を対価にして、エレンの力を借りた。それは分かる。一公国を治める立場なら、領民と兵に報いる為には目に見える対価が必要だからだ。
では、凱は何を対価に、今回の戦いに力を貸してくれたんだろう?
「簡単さ。ただ心から「助けて」って、一言言ってくれたから。だから、俺はアルサスの人たちを守る為に力を振るった。自分の怖い気持ちにウソまでついて」
「……ガイさん!」
ティグルの心は震えた。
自分とティッタだけは、どんな時でも、何があっても、ティグルの味方だと伝えたいのが分かったからだ。それが、ティグルの胸を熱い想いで満たしていた。
思えば、凱もなんだ
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