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魔弾の王と戦姫〜獅子と黒竜の輪廻曲〜
第7話『闇の暗殺集団〜七鎖走る!』
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夕を伝える紅葉―アカモミジ
冬薄を見舞う粉雪―コナユキ
それだけで紅茶(チャイ)は十分おいしい。
品性と教養を思わせる哲学があるほど、リュドミラ=ルリエにとって、紅茶(チャイ)とは日常に密接している必需品。
今、自身の公宮の執務室で、リュドミラは紅茶を静かに飲んでいた。
優雅な時を堪能しているとき、青い髪の少女の元へ一通の書簡が届けられた。

――エレオノーラ=ヴィルターリアが、ジスタート国王の無許可にてブリューヌ領内へ進軍――

――リュドミラ=ルリエ。エレオノーラ=ヴィルターリアの公判を執行するため、ジスタート憲章に基づき、王都へ出廷を要請する――

無意識に、溜息をついた。
要するに王都へ召集がかかったのである。
そんな書簡の内容の様子に僅かな一瞥を加えただけで、オルミュッツ公主は公務の処理を続けていた。
オルミュッツ公宮の最上階。彼女の机の小さな灯りは深夜になっても消える事はない。
自分で淹れた紅茶の香りに鼻孔をくすぐられつつ、リュドミラは月の映える窓際を覗いた。
連日続く激務に愚痴を漏らすことなく、彼女はこの夜も超過公務を続けていた。

「まったく、あの女は何をしでかしたのかしら?」

……修正。愚痴をこぼしていた。

傲岸不遜の野蛮人とは、リュドミラがエレオノーラに下した評価である。そして、初めて会ったときの第一印象である。
そして、ヴォルン伯爵と言ったかしら?どこの辺境の貴族か知らないけど、エレオノーラに付き合わされるなんて。
それでも……獣の皮を被ったような人でも、裏表がない分、嫌悪感がないのもまた事実だ。
別にエレオノーラを信じているわけではないが、きっと何か事情があったはずだ。直接会って話してみれば、真実が分かるはず。





―――なぜか、リュドミラにはそう思わずにはいられなかった。―――





『昼間・アルサス・セレスタ郊外』





さて、場所は変わってアルサスへ――――それは森と山に恵まれた、ブリューヌ領内の辺境土地である。中心都市セレスタが中心にそびえ、様々な穀倉部区画と、森や山によっての天然区画で構成されている。
中心都市と言っても、市民が想像するような豪華性や、賑わいは垣間見えない。土地の特色による税収の為なのか、ここの領主様は、贅沢とは無縁の生活を送っている。むしろ、それがティグルの気性にとって丁度いいのかもしれない。それでも、森や大地の配色を考慮しているのか、美観は十分に考慮されており、領主の敷地の大部分は一般住民に開放されていた。住民の生活を支える水車や風車でさえ、美しく、規則的に整列し、陽風と澄川を全体で受けて、力強く回転している。
久しぶりの平穏。凱はセレスタを出て、ユナヴィールの村へ向かって一人で街道を歩いていた。
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