第6話『想いを勇気に〜ティグルの選んだ道』
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する。
「ところが、襲われているティッタちゃんの元へ、あの噂の兄さんがやってきた!「待て!これ以上、その少女に切っ先一寸たりとも触れるな!相手なら、俺がするぜ!」って」
ティグルの魂は熱く震えた。あまりの嬉しさに、目尻が緩みそうになる。
いつしか、話を聞きに来た領民が増えていた。
「盗賊の連中はひいふうみぃ……10人くらいかな?獣のように襲い掛かる連中を、兄さんはこんぐらいのナイフでババババババって倒しちまったんだ!」
「そいつはすごいな!……そうだ、ティッタが誘拐されたって……」
「あ〜それについてはあたしにも詳しいことは分からないんだよ。マスハス様やバートラン様がティッタちゃんと一緒にいてくれたから、あまり追及はしなかったよ」
「マスハス卿が……」
その時、ティグルは思い出した。
マスハス卿は、ガヌロンの動きを抑える為に尽力してくれたと、手紙に書いてあったことを思い出す。
(……俺ってなんだか助けられてばっかりだな)
嬉しいのか、それとも情けなく思ったのか、くすんだ赤い若者はそんな心情を見受けられる仕草を示した。
「……まぁ、ともかくティッタちゃんは無事に戻ってきたんだ」
次の言葉を聞いたとき、再び、ティグルの手に力がこもる。これは、完全な怒りからくるものだ。
「そして……とうとうテナルディエの奴らがやってきたのさ」
体力や女子供、老人達は神殿に避難していた。マスハス卿の指示によって。
だが、そう神殿という領域も、安全で居続けられる保証もない。
外からくる鬨の声は、心身共に疲労させる。恐怖という緊張感が、喉の渇きを、腹の虫をより加速させる。
神殿の中にも、一応備蓄の食料があるものの、いつかは不足する。そもそも、アルサスは今まで外界の危機に無関心であった為に、いざという時の備えは何一つしていなかったのだ。
誰もが、近いうちに訪れる己の死に、誰もが絶望した。いや、したに思われたのだ。
「もう駄目かも。せめて子供達だけは助けてほしいって、神殿の中でずっと祈ってたさ。でもダメだった。神官様や貴族様は神様はいるって……確かに、神様は見守ってくださるけど、少なくとも助けてはくれないね。だからもう目に見えない神様にはお願い事をしないと誓ったのさ」
ブリューヌとジスタートが信仰する十柱の神々がきいたら、怒りそうなセリフである。
だが、無理もないとティグルは思う。実際、人間は目に見えないものより、目に見えるものの方が信じるに値するからだ。
「本当に一瞬だったんだ。奴らが町の防壁を破って、蛮族みたいに財産をかっさらって……」
今度は、女性の方が悔しさのあまり涙を浮かばせる。
「そんな時、どこから持ってきたか知らないけど、黄金の鎧を着てきて、我が物顔で歩く
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