第5話『蘇る魔弾!解き放たれた女神の意志!』
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ザイアン。這い上がってきたのは、人間の方だった。
――逃げるな!それでもテナルディエ軍の精鋭か!?――
ザイアンの命令は、空虚な響きとなってモルザイム平原へ響き渡る。
完全な戦意喪失。
思いのほか、テナルディエ軍は本能に忠実であった。
――やっぱり最後はてめぇか!ヴォルン!――
馬上のティグルは、高圧的にザイアンへ言い放つ。
――ザイアン!これ以上の抵抗は無駄だ!諦めろ!――
――黙れ!オレに命令するんじゃねぇ!――
総指揮官ザイアン率いるテナルディエ軍に、ティグルは「王手」をかけた。確かに「応手」はなく、「詰み」だった。
様々な遠因と要因が重なり合い、ティグルはザイアンを捕縛することとなった。
結局の所、ティグルの奇策を看破できなかった思慮と、部下の進言を一蹴したザイアン自身の在り方が、戦の幕を引いてしまった。
そして、セレスタの町へ帰還する――
「結局、オレは見捨てられたってわけかい?ははは、こうなると惨めなもんだな」
お縄になったザイアンは、自暴自棄になっていた。
何も心配することなく、略奪しに来ただけなのに、どうしてこんな目に遭わなければならないのか。
どうして雨後の茸を踏んだくらいで、こんな目に遭わなければならないのか?
「さあ!殺れよ!殺れっていってんだろ!」
「覚悟はできてるみたいだな」
エレンが淡々と告げた。
当たり前だ。撃退であれ、勝利で在れ、いずれかの形であれ、どちらかが勝ったという証明を示す場合、敵将という首が最も分かりやすい。
撃退だけならば、根本的戦の勝利に結びつかない。数多の戦場を駆け巡ってきた銀閃の風姫はそれを良く知っている。
「お前は……あの時の侍女……」
ザイアンは自嘲気味に笑っていた。その笑いは何処か乾ききっているようにも聞こえた。
「なんだよ……笑いたきゃ笑えよ。さぞいい気分なんだろうな。立場が逆転して、ご主人様が帰ってきて、そのうえテナルディエ軍の総指揮官様はこのザマだ」
「それで?どうするんだ?ティグル」
エレンがティグルにザイアンの処遇を問う。結果は分かり切っているが、問われたティグルは――
「どうする?ティッタ」
自らの侍女を指名した。
まさか自分に託されるとは思っていなかった為、ティッタの両目が驚きで開かれる。
何故、あたしに質問するの?そう不思議に考えた時、不意にザイアンの悪事を最も受けたのが自分だという事を思い出す。
改めて考えるまでもなく、その記憶はザイアンという人間性を知っている。
他者の視点から見ても、最もザイアンを恨んでいいのはティッタのはず。
理由がどうであれ、この戦の根底にあるのは、虐げられた恨みであることは変わりない。
だから、ティグル
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