第5話『蘇る魔弾!解き放たれた女神の意志!』
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ート軍が帰還する予定だろう。
それを見越してか、外つ国の人間達、ジスタート軍は何かと忙しくしていた。ルーリックもだ。
「これから、ずっとティグル様はいてくださる。今までは大変だったけど……」
「……いや、大変なのはこれからだ」
健気に希望膨らませるティッタに水を差すようで申し訳ないが、凱は告げた。
「多分、彼はこれから自分の事で精一杯になる。他の事に心を割く余裕はないだろう
さらに、ティッタを連れ去ろうとした魔物の事を持ち出せば、それこそ彼は自分に集中できなくなる。
凱には推測論があった。
十中八九、おそらくティグルはザイアン率いるテナルディエ軍を打ち破るだろう。黒き竜の旗を翻す兵達は難なく状況を覆すはずだ。
一度撃破したブリューヌ人だ。今度も勝てると意気込んでいる分、2倍や3倍の兵力差は大した問題にはならない。進軍速度と展開速度、戦いようのある状況下では、有利不利など千差万別に変わる。
勝てば、テナルディエはティグルヴルムド卿を討つため行動する。名うての暗殺者集団による暗殺か、隣国による外交的な制裁か、王国直属の騎士団による討伐か、自軍を率いて直接己が捕縛するか、処断かは分からない。
「ティグルヴルムド卿がジスタート軍をブリューヌ領内へ招き入れた以上、王政府はすぐにでも討伐軍を送ってくる。国土を売り渡した反逆者として」
「……反逆者」
ティッタは自身が言った言葉に、思わず絶句する。
「そんなことは……陛下にちゃんと事情を説明すれば」
「無理だ」
「どうしてですか?」
ティッタが凱に問い詰める。
「俺が逆に知りたいくらいだ」
ますます意味が分からない。
真剣な面持ちとなり、凱はティッタの両目を見据えて語り掛ける。
「ならば何故、テナルディエ家がアルサスを焼き払おうと進軍してきた?ヴォルン家に割いて与えた『王の領地』なのにだ」
アルサス。
ヴォルン家の土地であって、ヴォルン家のものではない。辺境の土地とはいえ、帰属権は全て王にある。
アルサスに住む民を守る誓いと共に、ティグルに与えたもの。
大貴族とはいえ、たかが戦略上の一存で『王が与えた領土』を焦土化していいはずがない。そんなことをすれば、テナルディエやガヌロンなら、自身がどうなるか分かっているはずだ。
「それじゃあ……ティグル様は」
「王政府は殆ど機能していないはずだ。考えられるのは……」
王の政事の滞りによる業務の二分化。
貴族の絡む案件は、このブリューヌ二大貴族に一任し――
それ以外の外交案件等は、文官たちが受け持つことに――
国の内乱を露見させない、固有戦力を持たない王政府による苦肉の国政。
「次第に彼の心は追い詰められる。そんな時、何より彼の心を支えてやれる
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