第5話『蘇る魔弾!解き放たれた女神の意志!』
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名前の人。
捕虜となっている間、ティッタを、領民を、居場所を守ってくれた人。
俺も会いたい。その人に。会って、その人の目を見て、声を聴いて、ちゃんとお礼を言いたい。
「ああ、奴らに報いをくれて必ず帰ってくる!」
馬上の人であるティグルは蹄を返し、早速蛮族を蹴散らしに姿を翻す。
――……一兵たりとも逃がしはしない!報いは必ずくれてやる!――
追い払って完結。そのような一筋で終わらせる気など、銀閃の風姫には毛頭ない。
エレオノーラ=ヴィルターリア。紅玉を思わせる瞳が、一気に灼熱化する!
完膚なきまでに叩き潰す。そうしなければ気が済まない。
狩る者を狩られる者に逆転させて、テナルディエ兵の立場がすり替わる。予期せぬジスタートの介入によって――
帰還する部隊を見失い、敵兵は混乱して闇雲に逃げ惑い、残存部隊は転進し、アルサスから撤退を始めていく。
そのようにして、領内の掃討戦が終結を迎える。
戦いの舞台はモルザイム平原へ移り、ザイアン率いるテナルディエ軍と、ティグル、エレン率いるジスタート軍は衝突する!
『アルサス主要都市セレスタ・ヴォルン邸』
それは、僅かな時間差。微かな空間が引き起こした事象なのだろうか。
――確かに、凱とティグルはすれ違った――
――ただ、敵と味方が入り乱れた境界線によって――
――引き合うべき両者は、互いに気付くことなく、正反対の方向へ――
――少年は、反撃の嚆矢を唸らせるべく、モルザイム平原へ――
――青年は、果たすべき約束の為に、ヴォルン邸へ――
女神の差し金ともいうべき『すれ違い』に凱が気付くこともないまま、ヴォルン邸へ、彼の青年は戻っていた。
荒らされた領内を見るたびに、凱の心は焦燥となって表れる。呼吸を整えないまま、凱は駆け付けたのだ。
だが、ティッタへの心配は杞憂に終わった。そして、平常にも終わらなかったことを――
屋敷に戻ると、厩舎に馬が繋がれていた。白い体毛をした一頭の馬だ。
「……馬?」
誰かいるのだろうか?
別の種の驚きのあまり、凱は声を上げて屋敷へ上がった。
「ティッタ?」
食堂には……いない。
次に、応接室の扉を乱暴に開ける。
ヴォルン家の侍女ティッタは、そこにいた。
彼女の名を呼ぼうとした凱は、一瞬息をのむ。ティッタの隣に禿頭の人物が立っていたからだ。
彼は凱を敵と認識したのか、腰に帯びている剣を抜刀した!
「ティッタ殿!お下がり下さい!」
「その男から離れろ!ティッタ」
何の運命の行き違いなのだろうか?ティッタは慌てて両者の仲裁に割り入った。
「あわわわ!待って下さい!ガイさん!」
「ティッタ?」「ティッタ殿?
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