第2章 魔女のオペレッタ 2024/08
最後の物語:夢を追う資格
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して《答え合わせ》まで為す術もなく雌伏を強いられる。
茂みを乱雑に掻き分けて姿を現したのは、暗色を基調にした装備の男達。
彼等に、引き摺られるように連行されたみことは怯え切ってしまって、時折ピニオラを呼ぶように声を挙げて泣いていた。
安心させてあげたい。この場所から早く助けてあげたい。でも手の届かない距離に、手を伸ばすことさえ許されない状況に、そんな小さな望みさえ所詮は絵空事にしかならないことを痛感させられる。
ほんの少しだけ見せられたみことの姿は、PoHの短い指示で回廊結晶の転移エフェクトによって消え失せてしまう。
あっという間に遠くへと連れていかれ、この場にはピニオラとPoHの二人だけ。どうにもならない状況に歯噛みしながら、ピニオラは自分を組み伏せる相手の言葉を待った。
「ゲームをしよう。これから起こる攻略組と笑う棺桶の戦争、それが終わるまではあのガキはアジトの中で生かしておいてやる。俺がガキを殺すまでに助け出せたらお前の勝ちだ。お前はいつ、どこで、なにをしても構わない。救うも見捨てるもお前次第だ」
「………まるで、わたしに貴方達を裏切れと言われたように聞こえたんですけど?」
「言っただろう、何をしてもいいってな。お前はもう根無し草だ。誰も咎めはしないさ。愛を知った人殺しが、大切なモノの為に手段を択ばずに戦う。………最高に泣かせるシナリオだと思わないか? そして喜べよ、主人公はお前ってわけだ」
自分を題材に、シナリオが描かれる。
だが、手法を模倣された怒りはない。そう思うと創作活動への熱意や矜持は驚くほどに希薄だったのではないかと気付かされる。
「とんだ三文芝居ですねぇ。始めからネタを明かす時点でガッカリですよ」
「ま、ぜいぜい楽しませてもらうさ。サル同士の殺し合いに色を添えてみな」
言うなり、ピニオラは拘束から解放され、現れたウィンドウにはギルド強制脱退の文言。
何の感慨もなく離れるPoHとは裏腹に、ピニオラは立ち上がることさえなく地に倒れたまま、虚ろな瞳で黒のポンチョが転移エフェクトの光に消えていくのを見つめる。動き出したのは暫く後のこと。辺りが静寂に包まれてからようやく、重そうに身体を起こしては最後にみことがいた地点へと視線を向ける。
みことが手から取り零したバスケットは踏み砕かれ、急激に削られた耐久値も限界を迎えて仮想の大気に青い破片を振りまいて爆散する。地面に残された色とりどりの木の実――――《そこにみことがいた証》を、どこかへ消えてしまわないように恐る恐る拾い集めた。その最中、ふと視界が霞んでは手元に雫が零れる。嗚咽が漏れ、手が思うように動かなくなった。
その姿は、生命の碑の前にいた誰かのようで、
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