第2章 魔女のオペレッタ 2024/08
最後の物語:夢を追う資格
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立つような感覚に襲われる。
《索敵》スキルでマークしていたみことを示す緑の光点。
それを囲むように、ピニオラの索敵範囲外から接近する三つの光点。示す色彩はオレンジ、PoHの行動から判断するに、彼が索敵スキルで確認したみことの居場所を、待機していたメンバーに報せて人質を確保する。
だが、ピニオラとて仮の姿を構築するためとはいえAGIに特化したビルドを行って自らを一般プレイヤーとして擬装していた。故に、みことを狙う外敵よりも先に保護、離脱すれば窮地は脱せる。打開策というには余りにも単調な手段を取ることを決したピニオラは、みことの下へと向かうべく地を蹴った。
「お前、変わったな」
「く、ぅ!?」
だが、ピニオラが二歩目を踏む筈だった地点を狙い澄ますように、投擲された肉厚の刃が突き刺さる。咄嗟に踏み出そうとした足を引き、軽業スキルによる姿勢制御によって中空で身を翻す。だが、その時点でピニオラは詰んでいた。
ピニオラを待ち構えていたように、PoHの右手が彼女の細い喉を捉えると、そのまま強引に地表へと垂直に叩き落とす。背中から打ち付けられたピニオラは衝撃に耐えかねて激しく噎せるものの、そんな苦悶さえ意に介することなく、左手でピニオラの顔の脇に突き立っていた得物を引き抜いて喉元にあてがう。最前の一手さえPoHに封殺される結末となり、同時に最悪のシナリオへと事態が展望することが確定した。忌々しげに表情を歪めることしか出来ないピニオラに、PoHは嘲笑を零す。
「ちょっと前のお前なら、こんな無謀な真似はしなかった。やっぱりあのガキに情が移って弱くなったか? お前がピエロになってちゃ話にもならないだろう?」
戦闘勘の差、見込みの甘さ、冷静さを欠いた浅慮な行動。
だが、《笑う棺桶》のレッドプレイヤーがみことに殺到するこの状況ではそれ以外に最善策が無かったのも事実。PoHがこのシチュエーションを予期していたかと思うと、じくじくと屈辱が湧き上がるのを実感しつつ、ピニオラはしかし抑えつけられたまま脱することも叶わず、ただありったけの憎悪を込めて睨むしか出来ない。
「おいおい、自慢のポーカーフェイスも泣いてるぜ? 安心しな。ガキはすぐに殺しはしない」
「それを信用する材料も、ありませんけどねぇ………」
「お前が本当に人間観察を得意だというのなら、俺が嘘を吐いてない事ぐらいすぐに解るはずだぜ。買い被り過ぎたか?」
とはいえ、怒りと悔しさで思考が混濁しているピニオラは、この時どうしてもその言葉の意味に至ることが出来なかった。
ぐるぐると巡る脳内は収拾がつかず、結果と
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