第2章 魔女のオペレッタ 2024/08
最後の物語:夢を追う資格
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間に零れ落ちるように、黒のポンチョが姿を現す。
開口一番、世間話を切り出すような台詞は艶のある美声。その音を耳にしてピニオラは眼前の存在――――《PoH》の顔に目を細めた。
「ハッ、お前に言われると腑に落ちないが、まあいい。少し話そうじゃないか」
言うなり、PoHは敷かれていたシートに腰を下ろす。
どこか無防備な相手を見るなり、この状況を警戒しているのは自分だけであるかのような、その警戒心が場違いであるような、落ち着かない感情を無理矢理静めながらピニオラは来訪者に相対する。
「今日はどうしたんですかぁ? まさか、センパイもピクニックなんて言わないですよねぇ?」
「そういう趣味は俺にはないが、今日は天気も良い。お前はそのつもりで来たんだろう」
やはり違和感は確実に存在する。
そもそもPoHはピニオラに対して友好的に接する事はない。同じギルドにあって、露骨に見せないまでも、彼は水面下で牙を剥いていたはずだとピニオラは過去を顧みる。どうあろうと歓談を繰り広げる仲ではないというのがピニオラの見解であった。
だからこそ悪寒めいた予感がピニオラの中で騒いでいた。この異様な空気の中で警鐘を鳴らし続ける自身の勘に相反しながらも、それでも相手の得体の知れない態度を前にしては動くこともままならない。迂闊な行動でみことを危険に晒すことこそが、今の彼女にとっての最大の禁忌であるのだから。
「………で、今日はどうなさったんですかぁ? こんな辺鄙なところまでいらっしゃるなんてぇ、実はセンパイってわたしのこと気にしてくれているんですかねぇ〜?」
「どうだろうな。だが、気にならないわけじゃないだろうよ。俺はお前をそれなりに評価してるんだぜ? 特に、劇作家としてのウデとかな」
「へぇ、そんなふうに思って頂けていたなんて意外ですねぇ〜」
不気味な対話は落としどころを見定めずに淡々と、核心を迂回するように続く。
PoHが本題に入るまでにはどれだけの時間を要するかは定かではない。だが、このまま真意の見えない意味深長な会話に付き合うほどの精神的余裕はピニオラからは失せていた。歪な空気から解放され、一刻も早く立ち去りたいという感情を込めた苦い表情を、目の前で寛ぐように構える殺人ギルドの首魁は、目敏く見破っては口角を大きく吊り上げる。
「そうだ。だからこそ、俺は悲しくてならないね。お前はいつまで経ってもやる気を出してくれないものだから、こうするしかなくなっちまう」
メインメニューを開いたPoHがホロキーボードに短く文面を打ち込み、数秒と掛からず手元からウィンドウは消え失せる。訝しみつつも、彼が何をしたか判然としなかったピニオラではあったが、次の瞬間に生じた異変に全身が総毛
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