第2章 魔女のオペレッタ 2024/08
最後の物語:夢を追う資格
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ベリングを繰り返した結果として得た副産物。前線に身を置く攻略組ではない彼女は出費も少額で済んでいたし、みことに出会うまでは必要最低限の生活であったこともあって、貯蓄だけはしっかりと為されていたのである。
「ねえ、どんなお家? どんなお家なの!?」
「ここからバッチリ見えてますよぉ。ほら、あそこの洋風木造一戸建てですよ〜」
せがむみことに笑みを見せ、後方の売家へ指先を向ける。
外周部が近いだけに、みことを一人で遊ばせるには不安が生じるものの、それでも下見してまで確認した眺望は文句の付け様がない絶景である。何せ上空を鉄の蓋で覆われている日々の中で空が見えるという条件は魅力的であった。本質的には牢獄の天井に青空を描いたような、疑似的な解放感なのだろうが。
「あれが、新しいお家………」
「家具はこれから揃える予定ですのでぇ、購入はもう少しだけ先になりそうですけれどねぇ〜」
新居になるログハウスに見惚れるみことを後ろから抱き締めながら、付随する情報を付け足す。
ただ、もう少し先になるという前置きも、気に入った家具が見つかりさえすれば売家も即刻購入となる。言うなれば時間の問題とも表現できるだろう。みことに悟られることなく、水面下で進めてきた企画ではあったが、同居人には喜ばれたようでピニオラも内心で喜色を浮かべる。
同時に、みことも何やら意思を固めたような面持ちで立ち上がった。
「お姉ちゃん、わたしもがんばる」
「………えっとぉ、何を頑張るんですか〜?」
「新しいお家で、お姉ちゃんにいっぱいご飯作ってもらうために木の実取ってくるの!」
「………わたし、責任重大ですねぇ〜」
「がんばるからね!」
「お気を付けて〜」
新居を購入したらキッチンに立たされる。無邪気さ故の残酷さに恐怖しつつも、確定した運命に腹を括り、ピニオラはみことを送り出す。
――――そして、遠くなる小さな背中を眺めながら、後方に姿を隠しているプレイヤーに意識を向ける。
気配はずっと感知していたが、こんなプレイヤーもモンスターも居ないような場所で隠蔽されれば、用事があると告げているも同義である。ましてや、正面から堂々と来ずに物陰から探るからには、腹積もりを潜ませていないわけがない。
だからこそ、みことの安全を第一に、ピニオラは単独となるタイミングでの接触を意図したのである。
ゆったりと、ピニオラはみことへ向けるそれとは根本からして異なる、どこか底冷えするような笑みを添えて木の幹に姿を隠す何者かへと視線を向けた。
「今日は随分と機嫌が良いんだな」
「女の子を覗き見するなんてぇ、あんまり趣味が良いとは思えないですね〜………センパイ?」
木の輪郭から空
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