第2章 魔女のオペレッタ 2024/08
最後の物語:夢を追う資格
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常緑樹の森林が彩る緑と、各所に点在する豊かな水に彩られた、風光明媚で且つ豊穣たるフィールドは、その全域においてモンスターの出現率が軒並み低く、場所によっては全く姿を見せないような場所さえ見受けられることから、武器を携えたプレイヤーは多くない。加えて、フロアボスの難易度も低かったことが幸いして僅か三日という電撃的な速度で攻略された層である。
その後、二十五層で起きた悲劇による損害が余りにも大きかったことから、多くのプレイヤーには《数あるうちの一つ》にしか認識が為されていないのが現状であろう。それ故に広大な層にプレイヤーの姿は疎らで、他者の目に付くことはない。穏やかに過ごすのであれば、この場所は誂えたように条件が整っている。およそデスゲームが繰り広げられている浮遊城に内包されたとは思えない片隅の層の、そのまた片隅に、彼女達は姿を現していた。
そんな二十二層の南西エリアに位置するエリア。
森の清澄な空気に満たされ、層の外縁から覗く空を湖が映し込む解放感に満たされたそこは、モンスターが全く出現することのない安全地帯であった。それ故にプレイヤーには一切の旨みが無く、見限られた地。だからこそ、安寧を求めた者には得難い楽園なのだろうが。
「これはなかなか、お願いした甲斐がありますねぇ〜」
和やかに弛んだ笑みを浮かべながら、ピニオラは木々の間を縫うように巡るみことを見守っていた。
幼い手に握られた藤編みのバスケットには、色鮮やかな木の実。同様の色彩は周囲の茂みや枝先にも点々と実り、それらを目にするたびにみことのテンションが青天井に上昇する。当然、木の実は食材アイテムで、低レア品である彼等は収穫された端からどこからともなく際限なく再湧出を繰り返し、ヒートアップするテンションはさながら無限機関の様相を呈していた。小さく色彩豊かで、手の届く範囲で集められる。お子様の興味を満たすものが、そこには満ち溢れていたのである。
「お姉ちゃん、みてみて!」
やがて、縁から漏れそうな量の木の実を収穫したみことが意気揚々と帰還するのを、ピニオラが迎える。
尻尾でも生えていれば千切れるくらいに振られているかのような、そんな達成感に満ちた笑顔とドヤ顔の混じった頼もしい表情を見せる少女の髪を梳くように撫でつつ、胸から溢れる温かいものに従って穏やかな笑みを零しながら、差し出された戦果を受け取る。
「大漁ですねぇ〜、えらいですねぇ〜」
「これでお料理の練習できるね!」
「あ、ぇ………あははー………そうですねぇ〜頑張らなきゃですねぇ〜………」
頑張ったみことを褒めて、無邪気さ故の切り返しに心を痛めるピニオラは、なんとかすんでのところで踏み止まる。
そう、先の会話の通り、みことは決して興味
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