Track 1 両手を広げて
活動日誌2 あいしてる・ばんざーい! 3
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あれは、私がまだ中学3年生になったばかり――と言うより、お姉ちゃんがスクールアイドルを始めたばかりの頃。
私が自分の部屋のベッドに寝そべりながら雑誌を読んでいると、突然廊下を走る足音が耳に入ってきた。もちろん、そんな足音を奏でる人物なんて決まっているんだけどね?
やがて、音が大きくなり私の部屋の前で止まると、刹那――
「雪穂、雪穂、雪穂ー! 腕立て伏せって出来るー?」
「なっ、なんなのよ! と言うか、ノックくらいしてよ? ……で? 何、その訳わかんない質問は?」
力いっぱい扉を開けて中に入ってきたお姉ちゃんが、唐突にこんなことを聞いてきた。
足音の持ち主は理解していても私の部屋に入ってくるなんて予想していなかったから、驚いて起き上がるとお姉ちゃんに向かって食ってかかっていた。
まぁ、お姉ちゃんの唐突さと訳のわからない質問は今に始まったことでもないんだけど? それでも、質問の意図を知りたいから聞いただけなのにさ?
「…………」
「……真姫さん?」
「……あぁ、ごめんなさい。少し……いえ、かなり予想がついたわ。まぁ、気にしないで話を進めて?」
「……はい」
話をしていると、真姫さんが途端に顔に手を当てて何やら苦渋の表情を浮かべた。私は気になって声をかけたんだけど、先を促されて返事をする。
だけど真姫さん? たぶん真姫さんの予想は当たっていますよ?
そんな意味を含ませた苦笑いを浮かべて話を進めるのだった。
そう、私はただ質問の意図が知りたかっただけなんだ。
なのに、お姉ちゃんたら――
「えっ、雪穂……腕立て伏せを知らないの? 腕立て伏せってこうやって……」
「それくらい知っているわよ! ……あー、もう! やれば良いんでしょ?」
腕立て伏せのやり方を教えようとしてきた。私も面倒になって、とりあえず腕立て伏せをすることにしたのだった。
♪♪♪
この話を聞いた真姫さんは少し驚いた表情をしていた。たぶん予想はしていたけど、それよりも少し斜め上の言動だったのだろう――私は苦笑いを浮かべて話を続けた。
「おー! けっこう出来るんだ? 私より凄いや!」
腕立て伏せを始めた私に感嘆の声をあげるお姉ちゃん。
まぁ、これでも現役女子中学生ですから? これくらいは出来ますよ。
とは言え、体育会系の部活の子達には及ばないだろうけど、ね? それでも一般の子達とは変わらないくらいには出来るんじゃないかな?
腕立て伏せをしながら感嘆の声をあげるお姉ちゃんを見上げて、少し得意げになっていた私に――
「じゃあさー? そのまま、笑顔を作れる?」
「……えぇ?」
「ほら、笑顔
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