Track 1 両手を広げて
活動日誌1 スタート・ダッシュ! 1
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「……ただいまー」
亜里沙と一緒に途中まで帰ってきた私は、家の玄関を開けながら挨拶をして中へ入ろうとした。
すると――
「おかえり、雪穂ぉ」
お姉ちゃんが玄関の上がり框に座り、いつもの練習着姿で靴を履こうとしながら声をかけてきた。
私は少しホッとした。わかっていたし納得もしたんだけど。
それでも、あの壇上に立ってスポットライトを浴びていたお姉ちゃんは――
「――っ! ゆっっきっ……むぎゅ?」
「……なにやろうとしてんのよ!」
「……えー? 入学のお祝いだよぉ?」
私の勘違いだったことにしておこう。
私が玄関に入りきると――正確にはお姉ちゃんが靴を履き終えると、両手を広げて私めがけて飛びついてきたのだ。
私は慌ててお姉ちゃんの突進を食い止めるべく、手のひらでお姉ちゃんの頬を押さえつけて制止させた。
そして突進が止まったことを確認すると、頬を挟んでいた両手を放してお姉ちゃんに行動の理由を問いただす。
そうしたら――両頬をさすりながら、こんな素っ頓狂な答えが返ってきたのだった。
どこの世界に! 入学のお祝いが!! 抱擁なんて風習があるのよ!?
そりゃあ、まぁ? 今のお姉さまは?? 誰もが羨む、スクールアイドル様ですから!?
抱擁をして欲しい人が山ほどいらっしゃるんでしょうけど?
生憎そう言うのは間に合ってますから――お・こ・と・わ・り・しますっ!!
って、そりゃあ、まぁ?
何もそこまで否定している話でも、ないん、だけど、さ?
べ、別に、お姉ちゃんの抱擁が嬉しくない訳じゃないんだよ?
むしろ、嬉しいと言うか――で、でも、ほら?
やっぱり、嬉しい――じゃなくて!! 恥ずかしいじゃん?
そ、それに、ほら? 今日初めて着たばかりの制服がシワになると困る。
そ、そう! 制服がシワになったらイヤだもん――だ、だから断っただけだもん!
「……じゃあさー? 雪穂は何が欲しい?」
「――え? 何って何の?」
唐突に、その場でストレッチを始めていたお姉ちゃんが聞いてきた。
脳内で自問自答を繰り広げていた私は、一瞬お姉ちゃんの言葉が何を指して言ったのかが理解出来ずに聞き返していた。
お姉ちゃんは私の問いに笑いながら――
「えー? いやだなー、入学のお祝いに決まってんじゃん」
当たり前の答えを言い切るのだった。
「別にいらない」
「――えっ、何で? お祝いだよ?」
「……欲しくないもん」
私は、お姉ちゃんのお祝いの申し出を断った。別に意地悪でも意固地でもない。
私にと
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