Track 1 両手を広げて
活動日誌1 スタート・ダッシュ! 1
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ってはもう貰っているから。
私がこの制服――音ノ木坂の制服を着れていることが、お姉ちゃんからの私へのお祝い。そう思っているから。
「そんなこと言わないでさー? 何かあるでしょー?」
それでもお姉ちゃんは食い下がってきた。
とは言っても、正直に話すのは恥ずかしいし、本当に欲しいものなんて――
「……ねぇ、お姉ちゃん……」
「――な、何? 何か見つかった?」
私は何て言って断ろうか考えていたんだけど、視線がお姉ちゃんの練習着に止まり、あることを思いついた。
そこで思いついた答えをお姉ちゃんに伝えようとしたら、嬉々とした表情で聞き返されてしまったのだった。
私は少し押され気味になりつつも言葉を繋げることにした。
「……お祝い……」
「うん、うん」
「……何でもいいの?」
「えっ? いや――ほら? その……私のお小遣いの範囲……いや、2,000円くらいでなら……」
最初の意気込みは何処へやら? だんだんと目が泳いで声が小さくなるお姉ちゃん。
と言うか、お姉ちゃんのお小遣いから2,000円まで減るって?
たぶんパンへの愛情と妹を天秤にかけたんだろう――結果、妹よりパンを取ったと言うことだ。
別にそこは良いんだけど――また、大変な事態に陥らないでよね?
私は脳裏に浮かぶあの悲劇と――頭を抱えて苦悩する海未さんの姿を想像しながら、苦笑いを浮かべていた。
私は苦笑いを抑えて、お姉ちゃんに答えを告げることにしたのだった。
「……これから走りに行くんだよね?」
「? そうだけど?」
「……だったら、さ?」
「……うん?」
「すぐ着替えてくるから……ね? 一緒に走っても……良い……かな?」
「別に良いけど? ――あー! うん、待ってるから早く仕度しておいで?」
「……う、うん……」
私は自分の今の望みをお姉ちゃんに告げた。
私の今の望み――それは、今日お姉ちゃんと一緒に走ること。
もちろんアイドル研究部に入部しても、お姉ちゃんと2人だけで走る機会はあるだろう。
だけどそれは――アイドル研究部の仲間として走ること。実際に、亜里沙と一緒に明日にはアイドル研究部への入部届けを出す予定でいる。
入部届けが受理された時点で私はお姉ちゃんと同じアイドル研究部の一員になる。
だから――
ただの音ノ木坂の生徒として、お姉ちゃんの妹として。
音ノ木坂学院スクールアイドルの高坂 穂乃果――お姉ちゃんである高坂 穂乃果と一緒に走れるのは今日だけしかない。そして、この時間だけは私だけのお姉ちゃんとして走ってくれる。
皆の高坂 穂乃果ではない|私だけ
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