帰郷-リターンマイカントゥリー-part3/慈愛の勇者と
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んだ」
「ぬ、盗まれた!?」
ただ事には聞こえないムサシの言葉に、サイトは声をあげる。
「それも、一匹だけじゃない。ジュランに住むたくさんの怪獣たちが、飛来した宇宙船に連れ浚われたんだ」
そそうかたるそう語るときのムサシの表情は、怒りと詳しさで満ちており、拳を血が滲みでそうなほど握りしめていた。
ムサシは、怪獣と人類の共存する世界を、遊星ジュランに築くことに成功した。
かつてTEAM EYESの一員であった頃に仲間やウルトラマンコスモスと共に救ってきた怪獣たちと、同じチームの一員だった女性『モリモト アヤノ』と、彼女との間に生れたて息子と一緒に、夢のような楽しい日々を過ごしてきた。
「お〜い!『カオスヘッダー』!」
ムサシに肩車されてながら、息子の『ソラ』は、山の上に腰かけている光の巨人に手を振ると、その光の巨人『カオスヘッダー0』も、手を振り返した。
かつて、ムサシとコスモスはこのカオスヘッダーとは対立し合っていた。ムサシがEYESの隊員だった頃、奴は幾つも分離した光の粒子の姿をして、怪獣に憑依し凶暴化させていたのだ。コスモスとムサシはそれを許すまいと、カオスヘッダーの悪行を幾度も食い止めた。しかし後に、カオスヘッダーのそれまでの行動は、秩序をもたらすための敢えての行動だったこと、カオスヘッダーにも心が形成されたことを知った。カオスヘッダーだけじゃない。怪獣たちはカオスヘッダーによる暴走がなくとも、人間側の身勝手な事情などの様々な事情で暴れ人々を混乱させてしまっていた。当然人類と怪獣たち、カオスヘッダーの間にはすでに深い溝ができてしまっていたのだが、ムサシは怪獣だけでなく、カオスヘッダーとの和解を試みた。普通、憎むべき敵との和解を望むなど考えられないことだが、憎しみを糧とした行動の愚かさを知るムサシは、それでもカオスヘッダーとの和解を…『憎しみからの救済』を諦めなかった。その果てに、ムサシはコスモスと自身の優しさを力とした慈愛の光でカオスヘッダーを浄化、和解に成功したのである。
こうして、我が子がかつての宿敵と、昔ながらの友人同然に手を振り合うのも、ムサシたちの努力の賜物にして、人間と怪獣の絆が起こした奇跡の証でもあった。
「なんだか信じられないよね。こうしてカオスヘッダーと一緒に暮らしてるなんて」
アヤノが、隣に立つムサシに対してそう言った。アヤノはEYESのメンバーの中では特にムサシとの距離が近かったことがきっかけで、現在はめでたくムサシと結婚しソラを授かった。だから、ムサシの理想の困難さを知っていたし、信じたい気持ちはある一方で、本当に叶えられるかどうかなんて半信半疑だった。だが、ムサシを近くで見ているうちに、彼を愛し、理想を信じるようになっていったのだ。
「確かにそうかもしれないな。でも、夢なんかじゃないさ。こうし
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