Track 1 両手を広げて
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……?」
「…………」
私は脳裏に浮かんだ1年間と言う単語に顔を曇らせた。
それに気づいた亜里沙が心配そうに私の顔を覗きこんできたのだけど、苦笑いで返したのだった。だって彼女には私の悲しむ1年もないんだから。
入れ違いで入学した彼女には共に刻む時間すらない。私が悲しむことなんて贅沢なんだろう。
そもそも、こんなことをお姉ちゃんが聞いたら――まぁ、ぜっっったいに! お姉ちゃんには言わないんだけどねっ!
きっと笑顔で、こう言うんじゃないかな?
そう――
「大丈夫だよ、雪穂。1年もあるんだから! ファイトだよ!!」
って。
正直な話、何に対してのファイトなんだか疑問なんだけどね? それでも、お姉ちゃんの1年もあるは説得力があるんだよね?
去年の音ノ木坂は生徒の減少による廃校の危機に瀕していた。現に私の耳にも噂が届いて、他の学校を受験しようかと思っていたくらいだし?
それを救ったのが、スクールアイドル μ's の存在。
彼女達の活躍により、新年度の募集も滞りなく済んで、私も入学式の席に座れている訳なのだ。
ふいに周囲を見回す。マンモス校の様な密度はないものの、それなりの密度は保っている会場。合格発表の時も番号に空欄があったのだから定員割れではないはず。
なにより、会場に纏う空気が希望に溢れている気がする。
それは、新入生だけではなく――先生や先輩方の全ての人から醸し出ている雰囲気。とても、廃校の危機に瀕していたなんて思えないくらいに。
そんな雰囲気を作った立役者は、紛れもなく μ's なんだと思う。
そして――
そんな μ's を作った立役者は、紛れもなくお姉ちゃんなんだとも思っている。
前に海未さんと、ことりさんに聞いたことがあった――
「なんで、お姉ちゃんがリーダーなんですか?」
って。
だって、お姉ちゃんだよ?
そりゃあ、優しいところもあるし、明るいし、元気だし。でも、リーダーって、ねぇ? 海未さんの方が向いていると思うし。
だから、素直な質問をしてみた訳なんだけど――その時、海未さん達は一瞬だけ驚いた表情を浮かべて顔を見合わせていたけど。すぐに吹き出し笑いをしていたっけ――なんでかな?
でも、笑いを抑えた海未さんが優しい微笑みを浮かべながら言った――
「……わかりませんか?」
それを隣で聞いていた、まるで自分が褒められたかのように嬉しそうに微笑むことりさんの笑顔に――
「……わかりませんよ」
恥ずかしくなって、ソッポを向いて答えたんだっけ。
だって――
2人の表情に、私の心の奥に大切にしまっていた答えが正解なんだっ
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