Introduction (プロローグ)
活動日誌♪ センチメンタル ・ ステップス!
[1/3]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
暖かくて、眩しい日差しが窓から差し込む――東京 神田にある和菓子屋『穂むら』の二階居住スペースの一室。
室内では、鏡に映る自分を見ながら悪戦苦闘している一人の少女の姿があった。
全体に短く切り揃えたショートカットの、前の両サイドだけを顎先の長さまで伸ばしている小豆色の髪。
数日前に義務教育を終えたばかりで、まだあどけなさは残るものの凛とした印象をも併せ持つ目鼻立ち。
小柄で華奢だが、活発な雰囲気を与える肢体。
そんな身を包んでいる、真新しい濃紺のブレザー。
淡い空の青と、濃い海の青のチェック。そのチェックの柄に差し色として使われる、赤のラインの入ったスカート。
そして、襟元につけた緑のリボン。
そんな自分を彩る新しい姿――
さまざまな想いと信念により導かれ、晴れて今日、正式に着ることを許された学院の制服。
彼女はそんな自分の姿を、芯の強さと真面目さが見え隠れする翡翠の瞳で、鏡の中に映る自分を真剣に見つめているのだった。
「うーん……よしっと!」
少女は自分をさまざまな角度で鏡に映し出しては、自分の身につけた制服とリボンを念入りにチェックしていた。
自分に課した厳しいチェックに、満面の笑みと納得の声をあげていると――
「――ちょっと、雪穂ー! 今日は入学式なんだから、さっさと下りてきて朝食済ませちゃいなさい!」
一階から、彼女を呼び叫ぶ母親の声が聞こえてくる。
「はーい。今行くからー」
呼ばれた少女――雪穂は扉を開けて、下へ声をかけると階段に向かって歩き出す。
しかし、数歩歩いたところで立ち止り……思い出したように踵を返すと自分の部屋を通り抜け、隣の部屋の前で立ち止る。
そして扉をノックをしてから、部屋の主である姉の穂乃果に声をかけた。
「……お姉ちゃーん、起きてるぅ?」
「……おはよう、雪穂! 起きているよっ!」
少しして、姉の部屋の扉が開き、既に制服に着替えている彼女が元気に挨拶をするのだった。
「おはよう、お姉ちゃん――って、見ればわかるから。それより……ねぇ?」
彼女は挨拶を返すと「わざわざ出てきてから起きていることを伝えなくても良いのに」と言う気持ちを含ませて、呆れた表情を浮かべて言葉を返す。
そして、少し恥ずかしそうに顔を赤らめながら顔を背けて、弱冠制服の裾を両手で摘んで、上半身ごと前に押し出す姿勢になって、疑問の言葉を投げかけた。
「ん? どうかした?」
「……な、なんでもないっ! 朝食できているって? 先下りてるからっ!」
「――あっ、ちょっ、雪穂ぉ?」
しかし、訳がわからないと言いたそうな表情で聞き返してきた穂乃果に、更に顔を赤らめて捲くし立てるように言い切ると、その場から足早に去っ
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ