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魔弾の王と戦姫〜獅子と黒竜の輪廻曲〜
第4話『命運尽きず!絶望の淵に放たれた一矢!』
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一人の側近は意見した。「黄金の騎士の狙いは、おそらく我々の混乱の拡大でしょう。圧倒的な個人の戦闘力で味方を同士討ちさせる為かと」と
対してザイアンはこう一笑した。「雨後の茸を養生することに何の意味がある?」と。
だが、黄金の騎士の活躍は、目を見張るものがある。
これほどの騎士を生け捕りにしたら、父上は喜ばれるだろう。
テナルディエ家の一人息子、ザイアンは幼少のころから、神話や英雄譚に出てくる聖戦士や勇者の類が大好きだった。

――伝説の鎧を着て、伝説の風貌を備え、伝説の剣をあつらえる、そんな存在を――

我がテナルディエの大軍へ一人で立ち向かっている等、それこそ神話や英雄譚に出てくる登場人物のようではないか。空想から現実へ飛び出したような喜びは、歪んだ欲望をかなえるべく、ザイアンの心を激しく駆り立てる。
有能な人材発掘の没頭者(マニア)である父上の為にも、この機を逃すべきではない!
美女を連れ去ることより、奴隷として男を売り払うより、勇者の名に恥じぬ戦士の存在は、何より価値が高いように思えた。
ただ一つ、雨後の茸を護ろうとする姿勢は気に入らないが――
帯刀していた腰の剣を引き抜き、ザイアンは意気揚々に叫ぶ。

「テナルディエ家たる者!そして仕えるもの!神々のご照覧する地に生まれ、生きがいのある戦場の勇者を掴まないでどうする!」

何とも大仰な台詞を叩いたザイアンだが、次に下した命令は苛烈である。

「あの男を生け捕れ!決して矢を射るな!殺したものは死罪とする!」

瞬間、兵士たちの間に動揺が走る。
殺すことさえ至難だというのに、生け捕りはさらに難を極める。
現に、あの男はセレスタの包囲網を打ち破ろうとしている。相当体力を消耗していると推測できるが、それを思わせない戦いを見せているのだ。
おそらく、黄金の騎士こそが、アルサスの心柱となっているはずだ。あの男がいなくなれば、アルサスを焼き払えるのではなく、あの男を捕縛することが、アルサスを焼き払う事と等しいのだ。

「しかし、ザイアン様……我々には手に負えない獅子を一体どうすれば?」

側近の弱々しい態度に、ザイアンは一瞥した。

「馬鹿かお前達。弱点がないなら、弱味を作るまでよ!」

そういうと、ザイアンの脳内に何か名案が浮かんだと言わんばかりに手を叩く。周りの家より一際大きいヴォルン家の屋敷を見据えたのだった。

「もしかしたら、弱味となるものがあるはずだ。どれ、焼き払う前に見てやろうか?」

高揚心を抑えつつ、ザイアンは馬を屋敷へ走らせた。一人の少年を凱の捕縛に任せておいて――
その少年の名は、ノア=カートライトと名乗っていた。
ザイアンは、同世代故にその少年を毛嫌いしていたが、実力は本物の為、彼に全て任せた。否、任せるしかな
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