第4話『命運尽きず!絶望の淵に放たれた一矢!』
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掛かっている老人たちが、避難先の神殿の窓から声を荒げて叫んでいた!神殿の外には敵兵がいるというのに、わが身の危険を顧みず――
その声援を受けて、いつしか疲労を見せていた凱は、今だ感知していないヴォジャノーイの毒性によって、わずかにグラつきながらも息を吹き返す!
前後に!左右に!視界を埋め尽くさんとするほどの、群がる敵兵を倒す為に獅子は戦場で舞い踊る!
――俺は……みんなを……アルサスの皆を……ティッタを死なせたくない!――
衝動的でしかないただの願望は、敵に笑われるかもしれない。
けれど、今の凱に必要なのは、己の魂の示せる場所だった。
『アルサス郊外・テナルディエ軍本陣』
――たった一人に略奪や破壊行為を妨害されているという報告は、既にザイアンの耳に届いていた――
「何?たった一人の男にだと?」
「はっ!あの黄金の鎧を纏った男にございます」
その獅子奮迅の戦い振りは、あまりに目立つために、丘上の人のザイアンでも簡単に見据える事が出来た。
仔細を聞くと、その男は人智を超えた速度で敵に詰め寄り、瞬く間に敵兵をなぎ倒していったという。
神殿で鬨の声を上げていた兵達は苦戦中。重装甲の鎧を、まるでピースのように解体され、無力化されていったとの事。
速さを図り間違え、馬が驚いたことを逆手にとって、騎兵たちを落馬させる。落馬した騎兵たちの、連鎖的に誘倒される様は美しく、それはさながら宮廷での遊戯である倒牌そのものだった。
飛び道具で黄金の騎士の動きを追求し、次々と矢を放った。それも、空間を埋め尽くすほどに!
手が何本もあるかのように見えるほどの速度で、鎧の隙間、すなわち多少生身の部分にかすり傷は追ったものの、黄金の騎士は捌き抜いて見せた!
それからも、黄金の騎士は荒れ狂うセレスタの街中を、跳躍し、疾走し、所せましと駆け抜けていった!
次第に、慌てる味方が増え始める。動揺から広がる不安はやがて同士討ちを生み出した。
展開の速さと状況の誤認による指揮系統の混乱。
この報告を聞いたザイアンは、軟弱な味方に対する苛立ちと、屈強な敵に対する尊敬と畏怖を抱いたのだった。
相手はたった一人である。強い敵である。速い敵である。賢い敵である。
ザイアンはとある神話の一文を思い出していた。
――銀閃のように、行動が迅速な勇者だ。――
――凍漣のように、分析が冷静な勇者だ。――
――光華のように、剣技が輝かしい勇者だ。――
――煌炎のように、闘志が焦熱せし勇者だ。――
――雷禍のように、眼光が紫電の如き勇者だ。――
――虚影のように、戦術が変幻自在な勇者だ。――
――羅轟のように、精神が豪胆不屈な勇者だ。――
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