352部分:第四十八話 幻影の罠その四
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第四十八話 幻影の罠その四
「わらわに匹敵するやものう」
「何と」
「エリス様にもですか」
「そうじゃ」
彼等に告げる言葉に偽りはなかった。
「若しやじゃがな」
「教皇、そこまでの力を持っているというのか」
「恐るべし」
「油断してはならん」
エリスの言葉は険しい。
「決してな」
「その通りですね」
「確かにあの者達は」
女神の言葉を心に刻む彼等であった。
「ではこれからの戦いも」
「常に」
「勝利は最後の最後までわからぬとも言われている」
エリスは最後にその勝利について言及した。
「どうなるかわからぬ故じゃ」
「わかりました」
こうして話を終える彼等だった。トラキアでもこれからのことについて様々な話が為される。戦いは彼等もまた気を引き締めさせるものだったのだ。
カミュは犬橇で北に向かい続ける。しかしまだコラに着いてはいなかった。
「広いっていうのは聞いてましたけれど」
「想像以上ですね」
その橇の中で青銅の者達がその中でぼやくようにして言うのだった。
「これだけ進んでも辿り着かないなんて」
「どうなってるんですかね」
「これがソ連だ」
カミュはそのぼやく彼等に対して告げるのだった。
「これがな」
「ただ広いだけで雪ばかりですか」
「何か凄い飽きるんですけれど」
シュミットとパラオがここでぼやくのだった。
「っていうか人の家見ないんですけれど」
「もう二日も」
「それもまたソ連だ」
カミュはこの二人に対してまた言うのであった。
「それだけ同じ風景が続いて人家も見えないのがな」
「凄いですね」
「こんな国ソ連だけですよ」
マクベスとキラは呆れた声であった。
「それも雪ばかりなんて」
「大変な国ですね。まともな道もないですし」
「この大地に道なぞ必要ない」
カミュはその彼等に対しても告げた。
「必要なのはだ」
「橇ですか」
「それなんですね」
「道なぞあっても雪の中に消えてしまう」
カミュはこうも言った。
「瞬く間にな。凍りそして雪の中に消える」
「全てが雪の中って」
「洒落にならないんですけれど」
「河も海も凍てつく」
まさに全てが凍てつくというのである。
「あらゆるものがだ。そして雪が全てを覆い尽くす」
「やれやれですよ」
「全く」
カミュの話をここまで聞いてまたぼやく青銅の者達だった。
「他の連中がドイツだのアメリカだの中国だので」
「それでメソポタミアにも行っているっていうのに」
ぼやく言葉は続くのだった。
「俺達はこんな雪だけしかないところですか」
「あるのはウォッカだけですね」
「っていうかこれないと死にますしね」
「俺達でも流石に」
「寒さを感じたらできるだけ飲むことだ」
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