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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百八十話 分進合撃
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うとしているときだった。
「一体何をやっているんです!」
「見ての通りです。敵が来たのでこれから迎撃に向かいます」
「何を馬鹿な事を言っているんです! 寝ていなくては駄目です」
レーナルト先生は俺を止めようというのだろう、ベッドに座って居る俺に向かってつかつかと近づいてきた。だが俺の前に立つ前にヴァレリーが立ち塞がった。
「中佐、そこをどきなさい!」
怒声が飛んだ、ヴァレリーに裏切られたとでも思ったのかもしれない。目がつりあがり、普段の優しい先生は居ない。
「それは出来ません。閣下は宇宙艦隊司令長官なのです。敵がこのオーディンを目指している以上、迎撃に向かうのは当然の事です」
落ち着いた声だった。そのことが反ってレーナルト先生を檄昂させたようだ。
「分かっているんですか中佐! 元帥はまだ動ける状態じゃないんです。命に関わりますよ!」
「このまま此処に居たら、私は確実に敵に殺されますよ」
「!」
「私はまだ死にたくありません。だから生きるために戦いに行きます。それに此処は食事が美味しくありません、いい加減ピーマンとレバーは食べ飽きましたよ」
レーナルト先生が絶句しヴァレリーが苦笑するのが分かった。彼女は俺にマントを付けさせると小声で
「立てますか」
と聞いてきた。
自力ではちょっと厳しい。ヴァレリーの肩に手をかけ立ち上がった。前に進もうとすると脇腹に引き攣るような痛みが起きた。入院中に着ていた服に比べると軍服は動きづらいし、重いのが良く分かる。歩くのも容易ではないようだ。
ヴァレリーに支えられながらゆっくりと歩く。車椅子を使うかと思ったが病人扱いされるのは昔から好きじゃない。大丈夫だ、一人では無理でも二人でなら何とかなる。俺はヴァレリーに支えられながら病室を出た。
帝国暦 487年 12月13日 帝国軍病院 ユスティーナ・フォン・ミュッケンベルガー
病室を出た後、不安に耐え切れずに養父に問いかけた。
「お養父様、一体何が起きたのでしょう?」
養父は直ぐには答えなかった。少しの間私を見ると、病室の前に居た警備兵に視線を向けた。
「向こうへ行こうか」
と言うと、養父は警備兵から離れるように歩き始めた。二十メートル程も離れただろうか、養父は立ち止まると私を見た。
「恐らくは敵がこのオーディンへ攻め寄せてきたか、或いは味方が大敗北を喫したかであろうな。それ以外に宇宙艦隊司令部から入院中の司令長官に緊急連絡など考えられん……」
敵が攻め寄せてきた? 大敗北? 自分の顔から血が引くのが分かった。多分顔色は青褪めているだろう。
「お養父様、敵が攻め寄せてきたと仰いますけど、攻めているのはこちらではないのですか?」
「ユスティーナ、戦争なのだ、どんなことが
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