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魔法少女リリカルなのは ViVid ―The White wing―
第三章
二十八話 Sword breaker
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言でも飛んできそうなそんな言葉に、しかしためらいなく肯定が帰ってきたのを少し意外に想いながらも、隣に立つエーデルに微笑みながら、ミカヤは歩き出す。
道中何を話したのかは、よく覚えていない。ただミッドの端にある自宅の前に、いつの間にかたどり着いたとき、帰ろうとするエーデルの背中に、ミカヤはふと、こんな言葉を駆けていた。
「……寄っていかないのかい?」
「…………」
その言葉に、エーデルは、ゆっくりと振り向く。
「「…………」」
しばしの間、互いの意図を探るように、二人の瞳が交錯した。
「……いい」
「……何故?」
問い返す必要があったのか、自分でも、疑問に思っていた。明日は彼も試合なのだ。いつまでもこんなところに居る理由はないし、二度も引き留めるのは迷惑だと、分かっていたはずだ。だが……。
しかし次の瞬間、エーデルは、まるで、ミカヤのやわらかい場所を切り裂くように、鋭く、痛い言葉を放った。
「……ミカヤ、怖がってる」
「ッ……」
「……けど、背中は押せない。歩き出すのは、ミカヤの仕事。甘えたら、ミカヤは、立ち止まるだろうから」
「…………」
「……来年が、まだ残ってる」
それだけ言って、エーデルは再び背を向ける。一瞬だけうつむいたミカヤはしかし、即座に顔を上げると、再度、年下の少年に呼びかけた。
「なら、来年……」
「……?」
「……来年、いろいろな事が終わったら……その時は、エーデルに甘えていいのかい?」
その顔は、悪戯っぽく微笑んでいる。冗談めかしたそれが本当に冗談なのか、それともそう見せかけた帆本気なのかは、エーデルにも読み取ることはできない。いつもの、ミカヤだった。
「……考えとく」
小さく笑ってそれだけ返し、エーデルは歩き出す。ミカヤはそれ以上、彼を引き留めはしなかった。
「……やれやれ」
肩をすくめて首をふり、ミカヤはどこか楽しげに横開きの家の戸口を静かに開き、静かに閉じる。家族はまだ帰っていないのか、家は静まり返っていた。
履物を変えると奥の道場へと歩いていく。道場にも、誰もいなかった。
晴嵐を傍らに置き、道場の戸口を締めたところで、彼女は壁に背中を預け、ズルズルと座りこんだ。
「きびしいなぁっ……エーデルは……ッ」
しゃくりあげた、涙声交じりの言葉。掌で抑えた両目から、透明な滴が、次々に滴り落ちた。
「ッ……!あぁッ……ふっ……ぐ……ぅぁあ……!!」
静かな女性の鳴き声が、道場の入り口から、何時までも、響いていた。
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