第13話 気づいた本音、残った疑問
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僕はこれ以上言及するのを止めた。
「えりちと、ハルチの話した理由に大きな差は無いんよ」
「え?あ、あぁ。大きな差ですか」
「うん。二人とも大切な誰かの為に音ノ木学院を守るために活動しているということ。そこに大きな違いはまったくないんよ。でも二人は違うんよ」
絢瀬先輩は祖母の大切な母校だから。
僕は幼馴染が通っている大切な高校だから。
絢瀬先輩にも思うことがあって行動を起こし、僕にも僕の動く理由があって行動する。
では、一体何が違うというのだろうか....?
「それはなんやろうね」
「東條先輩はわかっているのですか?」
「勿論。君は誰かの為に必死になれる。多分そこはえりちに近しいものがあると思うんよ。でも、ハルチはえりちと違う。それが何か...わかる?」
僕は数秒考えた後、首を左右に振る。
僕と絢瀬先輩の間には近しいものがある。それはいったい...
「さ、着いたで」
「え?」
気が付けばもう昇降口前に僕らはいた。
東條先輩は夕焼けをバックにしてもう一度言う。
「君はえりちに似ているけど、違う。それはなんやろうね〜」
「....」
「それが明日、ウチと会うまでの宿題!ええね?」
「は、はぁ...」
僕が情けない返事をすると、「それと〜」と言って更に話を続ける。
登場先輩が不意に、くるりと僕の方に振り向く。。
「春人くんは...高校生活、楽しんでる?」
「いきなりですね。なんでそんなこと聞いてくるんですか?」
「ええやんなんでも。それより、どうなん?」
迫られて、僕はふと考え込む。
その時間は多分十秒もかからなかったと思う。
顔を上げた僕の顔を見て、先輩はどうしてか喜んでいた。
「楽しいです。楽しんでいられる状況じゃないですけど、こうして目標を立てて必死になる。全力になれる。それがすごく充実していて...いいえ、充実しています」
「ほほぉ?そうなんか...お気楽やね、ハルチは」
「いや。なんか...すいません」
「ええってことよ。ウチはむしろハルチに期待しているんやから」
どうも先ほどからの東條先輩の言動の意図がつかめない。
高橋春人と絢瀬絵里。
僕たちは似ているけど、何かが違う。
僕は頭に靄を残したまま、スリッパと靴を履き替える。
最後に、お見送りしてくれた東條先輩に一礼して音ノ木坂から離れていく。
正門前には花陽と凛がいた。
凛は待ちくたびれた様子で。
花陽は嬉しそうに満面の笑みを浮かべて。
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