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魔弾の王と戦姫〜獅子と黒竜の輪廻曲〜
外伝
第0話『るろうに戦姫〜独立交易都市浪漫譚』
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が、書物で見ただけなんだ。名前を知っているだけで詳しいことは何も……」

そこで凱は言葉を切らし、布に包まって不機嫌そうに空間湾曲させているエザンディスに視線を移す。大鎌というのもあるが、どうも漆黒と真紅の絵模様に視線が言ってしまう。

「竜具――エザンディスか……どうしてだろうな。その名を聞いたとき、あいつ……懐かしい感じがしたよ」

「懐かしい?もしかしてお仲間とかいるのですか?」

ヴァレンティナは首をかしげる。凱はその言葉を肯定するように、首を縦に振る。

「そう。闇竜っていってな。俺と一緒に戦ってくれた仲間だ」

「一つ聞きますが、あなたの記憶に呼び覚まされるほど、エザンディスと……その『アンリュウ』というのは似ているのですか?」

「そうさ。共に戦った大事な仲間さ」

何処か感慨深く、凱はつぶやいた。
それから、凱とヴァレンティナは適当に何かをつまみ、飲み、会話にふけっていた。

「飯くっちまおうぜ。そんで今日はとっとと就寝だ」

「この都市は『夜のない繁華街』と耳にはさんだのですが……どこか連れて行ってくださいませんの?」

「却下」

「即答ですわね。つまらないです」

「あいにく俺はデリカシーないんでね」

「ウソつきですね。あなたは」

「何がだよ?」

「別に?」

「でも、そんなあなたの無骨な優しさは気に入りましたわ」

「言っとくけど、俺は……」

「『優しくしているつもりはない』って言いたいのですね。分かっています」

「顔を赤くして嬉しそうな顔するなって。誤解されちまうじゃねぇか」

なんて、どうでもいい応酬が囁かれていた。

彼女の身分にとらわれず、凱は自分自身の事を、出来る限りの範囲内で話した。
遠い、遠い東の国、ヤーファ国というところから来たという事。(もちろん、凱のハッタリである)
美味しい料理に舌鼓を撃ちながら、談話にのめりこんでいく。
誰にでも心を通させる親和性の高い人柄。
丁度いい酔い加減がヴァレンティナを包み込んできた。自然に頬が緩んでしまう。

――うふふ、なんだかいい気分です♪――

ヴァレンティナは片腕を頬杖してニコニコする。傍らには凱がいる。

――シシオウ=ガイ。姓と名が入れ替わった名前の殿方――
国が違う為なのか、姓―名という順番は、大陸ではまずない。シシオウという独特の発音も印象に残る。

――どこか不思議な雰囲気と、何か惹かれるところがある――
この人は、たまに冴えないナリと、どこか決まった仕草を魅せる。

――今まで出会った男とは何もかもが違う――
などと気分を弾ませていると、凱にほとほとにしとけと諭される。

「おいおい、ヴァレンティナ。もう酒はそれぐらいにしてくれ。
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