第6章 『八神はやて』
第48話 コスプレ少年リアルはやて
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で、現実を見つめなおすことが出来た。
そう。ふっきれたのだ。
この後、彼は、積極的にアイドル活動をしていくことになる。
その将来、ついには、世界デビューを果たすことに成功し、幸せを自らの手で掴む。
――――リアルはやて伝説のはじまりであった
そんな未来のことを知らない少年は、気持ちを整理するために、もう一度寝ようとした。
けれども、目が覚める直前に感じた感情が、いまも胸の中に渦巻いている。
今も湧きあがる黒く、痛々しく、禍々しい感情。
それは、身を割く怒り、心底からの絶望、そして――魂から噴出する憎悪。
◆
コミックマーケット、コスプレ広場。
大勢のコスプレイヤーやカメラを手に持った観客たちで賑わう空間。
この場所に、とある人物の登場することで、一際大きなざわめきがうまれた。
「なにあれ!あの人、そっくりなんですけど!?」
「お前知らないのか。リアルはやてだよ。ネットじゃ有名だぜ」
「『さん』をつけろよ、デコすけ野郎」
皆口ぐちに、近頃話題の天才コスプレイヤー。
通称『リアルはやて』の登場を囁き合う。
「リアルはやてさん、すげえ!生で見たけどマジそっくりじゃね?」
「『どうせフォトショで加工しているんだろ』とか思っていたら、マジでそっくりさんだった」
あまりの完成度に、度肝を抜かれる者が多数だった。
初見の人間にとっては、衝撃だった。それも当然だろう。
ネット上で流れる写真は、フォトショップなどで加工されている――普通ならば。
「生身であれとか。登場人物のモデルだと言われても納得するだろ」
「しかも、同姓同名って聞いたぜ」
だが、リアルはやてには、そんな常識は通用しない。
彼は、ありのままの素材で、勝負できるのだから。
たとえもし、キャラに似ていなかったとしても、素材はいいのだ。
名門校に通う帰国子女。中性的で容姿端麗。穏やかな性格。
どれをとっても、人気がでただろう。
もともと原作キャラに似ていなくても、モテて当然だった。
「お前も、ファンクラブの会員に入ったらどうだ?マナーさえ守れば、いろいろと特典があっていいぜ」
「特典?」
「ああ。抽選でイベントチケットやグッズなんかが手に入るんだ。メルマガなんかもある」
『リアルはやてファンクラブ』
このファンクラブこそ、リアルはやてを守る親衛隊である。
あまりの人気に、彼が参ってしまったことが、誕生のきっかけだった。
いまでは、悪質な見学者対策として活躍している。
ルールを作ったり。注意したり。曝し上げにしたり。
と。影に日向に、リアルはやてを守るための様々な活動を行っていた。
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