第6章 『八神はやて』
第48話 コスプレ少年リアルはやて
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、今の彼は知る由もない。
しかも、その頃には、彼もアイドル稼業が板に付き、ノリノリで、舞台、ラジオ、地方巡業などの活動に勤しむことになる。
―――人間万事塞翁が馬
人生何が幸いするか分からない。
後年になって、彼は述懐するのだった。
◆
――――ハイスクールD×D
このライトノベルには、何か運命のようなものを感じた。
夏休みに、ふと、立ち寄った書店で、表紙絵が目にとまり、衝動買いした。
表紙絵の少女は、アーシア・アルジェントと言うらしい。
彼女が、俺の一番のお気に入りだった。
教会から「悪魔」呼ばわりされるシーンには、身につまされる思いをしたし。
レイナーレに殺害されたときは、激怒したほどだ。
とにかく、自分でも驚くほど感情移入してしまうほど、ハマったのだ。
「俺だったら、絶対にもっと早くアーシアを助けるね」
とか。
「一誠たちは、結局、手遅れだったじゃないか。アーシアが、フリードたちから酷い仕打ちを受ける前に助けるべきだ」
とか。
「ライザー・フェニックスか。いけすかない野郎だ。焼き鳥野郎と呼んでやろう」
などなど。好き勝手に言いたい放題だった。
これを契機に、いままで興味がなかった日本のサブカルチャーに興味を持っていく。
頑なに拒んでいた『リリカルなのはシリーズ』も視聴し。
見事に、ファンになった。
ただし、やはり複雑な感情を抱かざるを得ないが。
あまりにも、登場人物にそっくりだったので。
思わず「このあだ名をつけられるのも無理はないな」と、思ってしまう。
17才になる誕生日の前日。6巻まで読んだところで、就寝した。
その夜に、不思議な夢を見た。
夢の中で、自分は5歳児になっていた。
母はおらず父がいた。人物に変化はないが、環境は全く違った。
まるで映画を見るかのように、異なる世界で過ごす自分を見ていた。
だが、とあるシーンで思わず突っ込みを入れてしまう。
夢の中なのに。いや、夢だからだろうか。
そう、住んでいる町の名前がハイスクールD×D世界の舞台である「駒王町」だったのである。
物語の中に自分自身を投影するほどハマっていたのか。
と、自分でも驚いたものだ。
ちなみに、リリカルなのはシリーズの「海鳴市」はなかった。
長い夢は続く。次々と映像は移り変わっていき。
9歳の誕生日前夜、両親が殺され、自分も殺されそうになった。
絶体絶命の中、青い光に包まれ――目が覚めた。
あまりにもリアルな体験に、思わず飛び起きて叫んでしまった。
それほどまでに、生々しい夢。
全身に冷や汗をかき、心臓は早鐘を打つ
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