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『八神はやて』は舞い降りた
第6章  『八神はやて』
第48話 コスプレ少年リアルはやて
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 それが一転して、容姿を褒められるようになった。
 自らの容姿がちやほやされるようになって、当初、彼は有頂天になっていた。
 ところが、時間が経つにつれ、自分の姿が、アニメキャラクターの投影にすぎず、なおかつ女扱いされている状況に気づく。
 新たなコンプレックスが生まれた瞬間だった。


 人気がないのも。

 人気が出過ぎるのも。


 どちらも苦痛を伴う、と。彼は身をもって知ったのである。
 なんとか、女扱いを辞めてもらおうとしたものの、全く、成功しなかった。
 それどころか、町を歩けば話しかけられる。
 近隣まで噂が広がり、まるで参拝客のように絶えず人が見に来た。


『リアルはやて詣で』


 当時、近隣で流行った言葉である。
 ネットで、話題になるほど有名になり、ついに、登下校で待ち伏せされるまでになった。
 彼の精神は、すっかり参ってしまい、結果として、不登校になってしまう。
 さすがに、クラスメイトたちは反省したらしく。
 火消しに奔走した。


 既に、有名になってしまった以上、噂の拡散は、抑えきれない。
 だから、噂をコントロールしてしまえばいい――逆転の発想だった。
 手始めに、専用サイトを作り、あえて、自身を宣伝する。
 その中で、見学者のマナーが悪く苦労していること。
 外に出るのが怖くなり、今は不登校になっていること、などなど。
 情報をこちらから発信することで、事態の鎮静化をはかった。


 目論見は、大いに成功。自然とマナーを守るべきだ、という空気が出来上がる。
 駄目押しとばかりに、ファンクラブまで作る徹底ぶりだった。


『アイドルになればいい。ファンが勝手に守ってくれるだろうさ』


 とは、当時の中心メンバーの発言である。
 あえて露出を増やし、信者やファンを増やすことで、守ってもらう。
 ようやく、周囲も落ち着いたところで、彼は学校に復帰できた。
 初めはぎこちなかったものの。
 皆で協力して、火消しをした経験は、確実に仲を深めていた。
 何が友情を作るかわからないものである。


 ただし、副作用もあった。


「今度のコミケは、新作でいくわよ!」
「はあ。ほどほどでお願いします、先輩」


 露出を増やすということは、アピールする必要があるということだ。
 自然と、コスプレなどファンサービスをする機会が増えていく。
 彼の内心は忸怩たる思いがあったものの、自分の身を守るためだ、といいきかせ、今日もコスプレに勤しむのだった。


 少年の受難は、当分終わりそうになかった。


 だがしかし、近い将来、アニメ会社からスカウトされて本当のアイドルとして、デビューすることになるとは
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