第6章 『八神はやて』
第48話 コスプレ少年リアルはやて
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「おーい、リアルはやて。今度のバリアジャケットは力作だよ。やったね!」
「その呼び方は止めてくださいと何度言ったか……。それと、俺は男です。女装なんてしたくないですよ」
「リアルはやて」それが、この少年のあだ名だった。
由来は、とあるアニメキャラと同姓同名で、なおかつ、容姿もそっくりだからだ。
あまりにも似すぎていて街中でも声をかけられる程である。
もはや生き写しだとか、ドッペルゲンガーじゃね?とか。
好き放題に言われている。
肖像権の侵害で訴えたら勝てるのではないか。
と、本気で思うほど似ていた――性別を除けば。
「俺」という口調は、少しでも男らしく見えるように。
と、いう涙ぐましい努力の跡であった。彼に両親はいない。
父の仕事に伴い、幼少のころより海外生活を長く続けてきた。
ところが、交通事故で、両親が他界。高校入学を機に日本に戻ってきてきた。
日本の高校に転入してからだ。自身がアニメキャラに瓜二つだと知ったのは。
すぐにあだ名は定着してしまった。
「はあ。どうしてこうなった……」
レベルの高い名門私立高校を受験し、昨年に入学。
帰国子女なので、英語はペラペラである。その分、古典や漢文に悩まされたが。
期待と不安の中。日本での高校生活の一歩目を踏もうとして――見事に失敗した。
それは、最初の自己紹介で、名乗ったときのこと。
突然、静かだった教室の一部が、騒然となったのだ。
『リアルはやてがいる』
この噂は、またたく間に学校中を巡りまわり、教室に見学者が詰め寄るほどだった。
とあるアニメキャラと同姓同名だと言われて、彼は、戸惑うしかなかった。
その程度のことで、どうしてここまで騒ぐのだろう。
と、当時は本気で不思議に思っていた。
日本のサブカルチャーと全く縁遠い人生だった彼とっては、戸惑うしかなかった。
あまりの事態に、引き気味になっていた彼に、親切な人物が教えてくれた。
『容姿も名前もそっくりだ』
これだけなら、まだ良かった――いや、よくないかもしれないが。
一番の問題は、そのキャラクターが『女性』だったことだ。
男子の制服を着ているのに、何度も何度も女性と間違われた。
もともと中性的な容姿だから、間違えられることは覚悟していた。
容姿は、彼にとってコンプレックスだった。
確かに、日本では、中性的な容姿は、人気が高いだろう。
だがしかし、彼が住んでいた国では、マッチョ信仰がはびこっていた。
女みたいになよなよした風貌の彼は、苦労したものだ。
幸いいじめこそなかったものの。
よくからかわれたせいで、すっかり自らの容姿を卑下していた
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