ブリューヌ激動編
第1話『流浪の勇者〜彼は愛故に戦えり』
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で取っていない」
そう凱が告げると、ティッタとドナルベインは我にかえる。言われてみれば、ヴォルン家の屋敷には血しぶきどころか、血の一滴すら落ちていない。
むしろ、落ちたのは敵の士気と、ティッタの恐怖心だった。
(俺の血で、お前たちの血で、ティッタ達の居場所を汚すわけには行かない!)
室内の物的被害を出さないためにも、気絶という手段がもっとも効果的だ。敵があまり動き回らない内に……仕留める!
中には直接凱が手を下さなくても、倒れるものがいたようだ。
凱の太刀筋の凄さに、腰を抜かして地に伏す者。
凱と視線を合わせてしまい、あっけなく戦意を失う者。
凱と視線を切り結ぶ前に、両手を頭に抱えてうずくまる者、様々だ。
「す……すごすぎます」
ぽーかんと口をあけたまま、ティッタは凱が獅子奮迅の活躍を終えるまで放心していた。
凱のウィルナイフは、使用者の意思によって、切れ味が自在に変化する。
明確な殺意を秘めた状態は、朱色に発光して竜の鱗どころか、空間さえ切り裂く―業刀―となり。
純真な穏意を秘めた状態は、金色に発光して獣の皮どころか、果物さえ切れない―凡刀―となる。
どんな悪党でも殺さない、全てを救うと誓いを立てた凱は、後者の方を使うとしている。
強盗の連中も、決して素人ではない。数多くの戦争を曲がりなりにも生き抜いた戦士たちだ。だが、その屈強の戦士たちも、たった一本の刃渡り30チェート(30センチメートル)の短剣に太刀打ちできないでいた。
「長い髪に……左腕の獅子篭手、獅子と黒竜の輪廻曲、吟遊詩人の歌通りだな」
「どうする?今なら気絶だけにまけといてやるぜ。さぁ、ティッタを離せ」
真剣で鋭い眼差しで、凱はドナルベインを見据えていた。
「おのれぇぇ!大人しくしておればいい気になりおって!!このまま引き下がれるかぁぁぁ!」
盗賊に身を落としたといえど、彼も元は数々の戦場を駆け巡ってきた戦士。その意地が彼を踏みとどまらせた。
猛然と遅い来るドナルベインを前にしても、凱の刃はぶれることはなかった。
「この世に獅子王は二人もいらん!貴様から殺してくれる!!」
「仕方ないか……」
どこか捨て鉢な口調で、凱は首領の説得をあきらめた。
突進する敵を、常人を超えた跳躍で交わし、頭上に金色のウィルナイフを叩き込んだ!
――ゴン!!――
鈍器を殴る音に近い乾いた音が、ヴォルン家全体に響き渡る。刃物では決してありえない効果音が、戦いの終了を告げたのだ。
「つ、強すぎる……そいつは……最強じゃなく……反則って……もんだぜ」
最後の捨て台詞がそれだった。国獲りを
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