ブリューヌ激動編
第1話『流浪の勇者〜彼は愛故に戦えり』
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た。
「出てって……」
「あん?今なんて言った?」
「出て行けって言ってるのよ!あなたみたいな人は指一本触れないで!それが分かったら出て行って!出てけ!!」
顔を真っ赤にしてドナルベインに怒鳴りつける。しかし、ドナルベインは鼻で笑って自論を飛ばす。
そして、ティッタの胸倉をつかんで自分の頭上に持ち上げた。
首を若干圧迫され、少女の呻き声がもれる。
「貴様みたいに何も出来ない田舎育ちの小娘が偉そうな口を叩くな!」
「こんな金貨の入ったもんを見せびらかしてたら、『どうぞ、持って行ってください』とお願いするようなもんだろ!ティッタちゃん?」
先日奪われた金貨の袋を、男の一人はわざとらしく見せ付ける。
「どうする?この娘の濃厚で甘い血を吸いたい者はおらぬか?中々上質な娘だぞ」
「オレにやらせてくだせぇ!」
「いや、オレが!」
ドナルベインが部下に獲物を譲ろうと場を盛り上げて、苛虐心をあおる。部下どもが│囀《さえず》る中、かろうじてティッタが言葉をつむぐ。
「どうして……どうしてこんなことをするんですか!?」
「ここアルサスを基点としてわしの……わしの王国を作る!酒池肉林の夢を成就させるためにな!」
太刀打ちできない無力感に苛まれ、ティッタは顔苦しそうにしつつも口を開く。
悔し涙が、ティッタの頬を伝う。
だが、その悔し涙を嬉し涙に変えてくれる使者が、意外な形で現れた。
「う……うう……」
子分らしき男が苦悶を浮かべて戻ってきた。周辺の警戒を命じられた手下だ。
「おう、どうした。随分戻ってくるのが早いじゃねぇか?」
ドナルベインが疑問を浮かべつつも、部下を迎え入れる。しかし、部下は何も語らない。
「……」
「おい!何か言ったらどうなんだ!?」
「……つ、つえぇ!」
パシリの男は、まるでカーテンがずり落ちるように力なくひざを折り、あっけなく倒れる。
その男と入れ替わるように、自身と同じ栗色の髪を持つ青年が立っていた。
「あ……さっきの髪の長い人……ガイさん?」
黙ってみていた凱は怒気の成分を含めた声で言い放つ。
「やはりあの時、叩き潰しておくべきだったか?心と共に」
「誰だ!てめぇ!」
「明日を食いつないでいく……誰かを養う……大きな病から人を救う……そんな理由がお前達の口から出ればよかったんだがな」
野盗の行いとその理由や状況によっては、凱は手を出すべきか決めかねていた。
もがき、あがくことは誰もが平等に与えられた境遇であり、生命の本質であることを、獅子王凱は知っている。
野盗でも、動物でも、人間でも、竜でも、悪魔でも、例外はないのだ。
だが、堕落の終着点
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